ウクライナの天然ガス在庫が前年比でほぼ半減した。ここにもロシアとの緊張関係が続くウクライナの苦境が表れている。ウクライナにある天然ガス地下貯蔵施設の在庫が前年同期比で46・3%減少し、114億立方メートルだった。ロシア国営ガス企業ガスプロムが1日、発表した。

 

 ガスプロムによると、2022年1月の天然ガス輸出量は前年同月比で41%減の114億立方メートルだった。2022年1月の生産量は、前年同月比5億立方メートル減(ー1%)で474億立方メートルだった。

 

https://www.gazprom.com/press/news/2022/february/article547173/

 

 ロシアとウクライナが例年、冬季になるとガスをめぐる紛争を繰り返してきたことは、多くのウォッチャーの知るところである。欧米系メディアはロシアの非を強調する報道が多いが、ウクライナ側によるガス代金の未払いやガスの横流し疑惑が紛争の原因と指摘する声もある。

 

 そして例年、これらの紛争を最終的に仲介し、解決策を提供してきたのがメルケル首相率いるドイツだ。ドイツは例年、ウクライナの未払い分を肩代わりしてきた。ドイツは最終消費地であるドイツまで、契約量・契約圧力でガスが届いていないことを認識していながら、はらわたの煮えくり返る想いでウクライナを支援してきた。しかし、今回は調停者メルケルが不在の中、ショルツ新政権がどう欧米とロシアを仲介し、ウクライナを宥めるのか注目される。

 

 1日のガスプロムの発表によれば、ガスパイプライン「シベリアの力」経由の対中国ガス輸出は、ガスプロムと中国石油天然ガス集団(CNPC)の長期契約の枠組みの中で拡大しているという。

 

 今回のガスプロムの発表を見ても、ウクライナや欧米の緊張関係の中でロシアと中国が結び付きを強めていることが伺える。紛争が長引けば、長引くほど、ロシアを中国の側に押しやり、ドイツのエネルギー安全保障が脅かされ、そして、ガスプロムの対欧州輸出が細る。ロシア政界、プーチン大統領に影響力を行使できるという意味で、紛争解決の鍵を握っているのは、まさにガスプロムではないだろうか。

 

 

(IRUNIVERSE EEEU)