石油業界の変遷について① ガソリンの販売が主体の石油業界がなぜEVを推進するのか」からの続き

 

 

大手メジャーが精製と販売を一手に取ってビジネス

 石油産業の歴史は、1859年に米国ペンシルベニア州タイタスビルにあるオイルクリーク川岸で、元鉄道員のエドウィン・ドレークが、後にドレーク井と呼ばれる回転式掘削機を用いて原油生産が成功したときに始まる。

 

 このニュースを受け全米から原油による一攫千金をめざす有象無象がタイタスビルに集まり、ゴールドラッシュならぬオイルラッシュが引き起こされた。

 

 こうした中、当時会計士だったジョン・D・ロックフェラーは、原油を採掘するだけでなく、精油所を建設して精製部門および販売部門の双方を牛耳りたいと考え、1870年にオハイオ・スタンダード・オイル社を設立。石油を運ぶ鉄道やパイプラインの事業者などを傘下にいれながら事業を拡大していき、1890年には全米精油書の80%を占めるまでに成長した。

 

 しかし、1900年頃になると、同社の米国内市場での企業統合が問題視され、持株会社のニュージャージー・スタンダード・オイルに対し、反トラスト法いわゆる日本でいう独占禁止法違反の判決がくだり、スタンダー・ドオイルは解体されることになった。しかし、実際にはスタンダード・オイルの力が弱まることはなく、解体後に名前を変え、エクソン、モービルとして、世界の石油市場に君臨し続けた。

 

 ほぼ時を同じくして日本では、日本で生産される貝細工の貿易で財をなしていた英国の貿易商マーカス・サミュエルが1897年にシェル運輸貿易会社を設立。1890年にオランダ領のインドネシアで石油開発を開始したオランダのロイヤル・ダッチ社との提携により、1907年にロイヤル・ダッチ・シェルが設立された。

 

 一方、欧州では、石油産業を担う事業者として英国においてBPの前進であるアングロ・ペルシャン石油が1909年に設立。フランスでは1924年にトタールが設立された。

 

 このような世界各地で勃興した石油産業の企業の中でも特にエクソン、モービル、テキサコ、ソーカル、ガルフ、ロイヤル・ダッチ・シェル、BPがその代表格として、後にセブンシスターズ、または石油メジャーと呼ばれるようになっていく。

 

 

石油メジャーのおごりとOPECの台東

 もともとランプの燃料として始まった石油は20世紀に入ると、自動車や航空機・船舶の輸送用燃料として活躍するようになっていく。この中で世界中の国々が石油を戦略物資の一つと捉えるようになり、第一次世界大戦、第二次世界大戦などでは、石油の持つ国と持たざる国の差により勝敗が分かれる結果となって現れたが、両戦争を通じても石油メジャーは衰えることなく、石油の需給をコントロールし続けた。

 

 一方、中東では第二次世界大戦後、石油メジャーが中東諸国と交わした長期の契約において利権をセント単位で買い、ドル単位で販売するなど構造的な不公平が顕在化したため、1960年にイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの産油国5カ国で、OPEC(石油輸出国機構)を設立した。これによりOPECと石油メジャーの団体交渉が可能になり、価格取引の不公平が解消していった。

 

 しかし、こうした中で1973年には第四次中東戦争が勃発、その際、アラブ諸国が集まって設立されたOAPEC(アラブ石油輸出国機構)が、イスラエルと交戦するエジプトとシリアを支援するためにイスラエルの友好国に対して石油の段階的な供給削減と禁輸を発動したため、世界の原油価がアラビアンライトではバレルあたりで3ドルから12ドルになるなど4倍にも値上がりし、日本でも石油製品の供給不足への危機感からトイレットペーパーが売り切れるなどして経済に大きな打撃を与えた。

 

 また1979年には、イランのパーレビ国王に対するホメイニ師を指導したイスラム教シーア派が宗教革命を起こしたことでイラン国内が混乱。一時的にイラン国内から日量600万バレルの原油が出荷停止になり、このときも原油のスポット価格が12ドルから40ドルの水準まで値上がりした。

 

 

石油メジャーの衰退と日本の石油元売りの再編

 このような不安定な石油情勢を見越して1983年にはニューヨークのマーカンタイル取引所とロンドンのインターコンチネンタル取引所が原油先物取引を開始し、原油のプライスリーダーがOPECから先物へと移行していった。その後の世界の原油は、1991年の湾岸戦争、1997年のタイ・バーツの暴落を機にはじまったアジア通貨危機などがあったものOPECの需給調整により原油価格は20ドル台で推移したため、石油メジャーは再編を余儀なくされ、1999年には、エクソンとモービルが合併してエクソンモービルが誕生。さらに2001年にはシェブロンがテキサコを買収した。これによりセブンシスターズで名を馳せた7大メジャーは、エクソンモービル、シェブロン、シェル、BP、トタールの5大メジャーに集約され、石油業界の大きな再編が進むようになった。

 

 一方、日本では、メジャー再編から遅れること約10年経った2012年、エクソンモービルが東燃ゼネラルに対し事業を譲渡する形で日本から撤退。続いて2015年には、ロイヤル・ダッチ・シェルが出光興産に昭和シェルの持ち株を売却して撤退した。日本の石油市場を衰退市場であるとの判断からだった。

 

 日本の石油市場の衰退はメジャーの撤退だけでは止まらなかった。2017年4月には、東燃ゼネラルグループとJX日鉱日石エネルギーが合併してJXTGエネルギーを設立、さらに7月には、コスモ石油とキグナス石油が資本・業務提携を開始した。そして2019年4月、出光興産と昭和シェル石油が合併した。

 

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(IRUNIVERSE Ishikawa)