1月3日のNHKラジオで双日経済研究所の吉崎主任エコノミストが米国バイデン政権の主要課題がインフレ懸念をどう払しょくするかが課題だと伝えた。中間選挙を控えてバイデン政権の支持率が50%台から大きく低下し40%台となっている事や民主党と共和党の議員数が下院でも拮抗し、上院も同数で拮抗している為、政権の安定性が崩れた場合、米国の経済運営方針の転換が更に米国のみならず、世界経済特に米中関係への影響も懸念される。

 

 米国のインフレ懸念を増幅した主因は、供給が需要の急拡大に追いつけなかった事が大きな要因であるが、エネルギーや材料の需要増で価格が高騰している点もあるが、背景に米国の購買意欲が歴史的に大きい事も要因となっていると。

 

 12月18-19日のニューヨーク・タイムス紙は、パウェル連邦準備制度委員会の議長のインフレ抑制への対応が遅れた事を指摘している。パウェル氏はデータに基づくインフレ懸念を重要視する点が特徴で、インフレに気付いて対応を開始したのが11月に入ってからという点を指摘している。それまで連邦準備制度委員会のスタッフもインフレが一時的で休息すると主張していた。

 

 では具体的な消費者物価指数のひと月単位のインフレ状況を図1で見てみたい。

 

・21年1月から6月に掛けて、20年12月0.2%だった物価指数CPIが0.3%から0.9%まで急増した後に、7-9月は0.3-0.5%レベルまで休息した。

・しかし10月0.9%、11月0.8%まで再度急増の傾向が示された。

・米国のCPIは約2ヶ月遅れで判明する点を考慮したい。

 

 図2で、12ヶ月の累積年間消費者物価指数を見ると、

 

・1月―6月の間で全ての物価の累積で5.5%まで急速に上昇した。

・7-8月停滞後9月に再度上昇し7%まで再上昇した。

 

 3番目のTableAではどの項目で特にインフレ率へ影響を及ぼしたのかが判る。

 

・食料項目は:6.1%増加した。

エネルギー項目:ガソリンと燃料油は60%近く増加した。

・エネルギーサービス項目:電気6.5%、ガス25%増加した。

食料とエネルギーを除く項目:全体で9.4%増加だが、自動車の新車11.1%、中古車31.4%

・エネルギーサービスを除くサービス項目:3.4%となった。

 

 米国のインフレの元凶は、エネルギー価格と自動車生産の停滞であった。

 

 

図

 

 

 欧州のインフレも天然ガスの価格高騰が主要因であった。米国も家庭用のガス需要やガソリン価格の高騰に加えて、自動車生産の停滞が中古車価格を押し上げている。

 

 バイデン政権のインフレ課題が明確になってきた。米国の経済が回復するには、エネルギー価格高騰と、やはり自動車の生産に影響している半導体不足やEV車生産の為のバッテリー需要などを克服する事が肝要となる事が明確になった。それに加えてパウエル議長の金利政策がインフレ抑制を克服できるか、金利抑制が前倒し実施の可能性も高まっている。

 

 欧州、米国と懸念される課題は共通した原因であることから、アジア経済でも同じ原因でインフレが早晩の課題となってくる事は、疑問の余地はない。何故ならカーボンニュートラルによる地殻変動は全世界の課題であり、これを克服していく時間軸は、今後20年以上の課題として、カーボンニュートラル問題の解決までの過程で何度も起こりうる事象である。

 

参考:

 ・NHKラジオ1月3日朝7時台、米総務省統計局Dec.10,21,News Release、

 ・The New York Times of Dec 18-19,2021

 

 

(IRUNIVERSE Katagiri)