ウクライナの国営ガス・石油会社Naftogaz は22日、ロシアのエネルギー会社Gazprom が、欧州ガス市場を独占し「同社の立場を濫用」しているとし、欧州委員会に対し、現状の改善措置を取るよう要請した。

 

 Naftogaznによると、Gazpromは、需要の急増にもかかわらず、意図的に欧州スポット市場における天然ガスの供給を削減し、競合による欧州へのガス供給もブロックしているという。また現在、欧州におけるガス価格の高騰が、エネルギー危機を引き起こし、多数の産業や一般世帯へ影響が出ているが、この背後には、Gazpromが絡んでいることも示唆している。

 

 Naftogaznは、Gazpromの行為は、独占禁止法に違反するとし、欧州の消費者に多大な悪影響を及ぼしていると主張している。同社は欧州ガス市場における主要バイヤーだが、Gazpromの独占行為により、自社事業に大きな影響が出ているとして、欧州委員会へ、Naftogaznの違反行為を取り締まるよう訴えた。

 

 Naftogaznによる長期供給契約にも関わらず、Gazpromは、同社所有の欧州ガス備蓄施設へのガス供給を拒否しており、それに対し何の説明も行っていない。Naftogaznは、Gazpromのガス在庫量には全く問題はないと主張しており、売り渋りであることを強調している。

 

 欧州におけるガス価格は、先週は初めに1921ドル/1000m3まで上昇、記録的な数字となった。今回の欧州のガス価格の高騰については、当初から、ロシア政府の意図的なものであることを指摘する声も多い。ロシアとウクライナ国境における政治問題や、ロシアが関わるガスパイプライン・プロジェクトNord Stream2のドイツの承認が遅滞していることが深く関わっていると見られ、ガス危機は、ロシアの政治的切り札として使われているという見方が強い。

 

 Naftogazn側も、Gazpromの行為について、EU基準を満たすことなくNord Stream2のパイプラインの稼働を急ぐロシアの策略であると述べている。

 

 ロシア政府は、関与については否定しているが、Gazpromは、その大部分を国が所有しており、国営に近いとも言える。同社のガス事業は、抽出から生産・精製・輸送・流通・マーケティングまで縦型統合で展開しており、業界では最大手の一つである。

 

Sources:

 ・https://www.naftogaz.com/www/3/nakweb.nsf/0/6079ec97da7d95cac22587b30029c7f8?OpenDocument&year=2021&month=12&nt=Новини&fbclid=IwAR2rz4vsPfXgi5B6t-LQZVAIgCxwChgsRZ7ZmlNgW76fCtCEY6mXn_CFGC0

 ・https://www.ukrinform.net/rubric-economy/3373790-naftogaz-complains-to-the-european-commission-about-gazproms-anticompetitive-actions.html

 ・https://www.euractiv.com/section/energy/news/naftogaz-ceo-certifying-only-the-nord-stream-2-last-mile-is-a-mockery-of-eu-rules/

 ・https://www.euractiv.com/section/energy/news/ukraines-naftogaz-complains-to-eu-over-gazproms-abuse-of-dominant-position/

 

 

(Y.SCHANZ)