12月23日から24日の2日間にかけて、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所主催の第440回 定例研究報告会「2022年のエネルギー展望」が開催された。

 

 今回は2日間の開催という事もあり、今年度のエネルギー事情の総決算とも言える様な構成となっている。今回の記事では最初の発表である江藤氏の内容について取り上げていきたい。

 

 

コロナ禍を越えてエネルギー事情を見通す 江藤 諒氏

 計量分析ユニット エネルギー・経済分析グループ主任研究員 江藤 諒の発表は「2022年度の日本の経済・エネルギー需給見通し 」というものだ。

 

 これは文字通り、2021年度の内容から次の年度のエネルギー需給を予測する事が主題となっている。

 

 2021年度の諸要素を見ていくと、まずは経済失速の原因となるコロナ禍が、次いで世界経済や原子力発電といった要素が挙げられた。

 

 2020年度と比較すればコロナ禍は重症者が減少するものの、防疫対策については依然として実施されている状況である。

 

 また世界経済については米欧露を中心とした人流の活発化により世界経済の成長率は5.9%の増加を見込んでいる。

 

 原子力発電についても再稼働が順次続いている一方で停止する炉も出ているものの、発電量は676億kW(前年度比+82.7%)と増加気味だ。

 

 2022年度においてはやや明るめな見通しが出ている。

 

 コロナ禍についてはワクチンの摂取や治療薬の開発と配備が進むことにより、実質的に経済は正常化するという見込みだ。

 

 世界経済においてはアジアや低所得国等がコロナ禍の終息により内需回復の機運が高まるとされる。

 

 しかし成長見込みは世界全体で4.9%増と、やはり2021年度に活気づいた先進国の伸びよりかは控え目と言えるだろう。

 

 原子力発電については2022年度は再稼働する発電所は12基となると予想され、発電所は718億kW(2021年度比+6.2%)となっている。

 

 ここからはより詳しく今回の内容を見ていく事となる。

 

 実質GDPの成長率は2年連続で3%の増加になると見込んでおり、その大きな要因は人流の増加とそれにともなう企業体力の向上による設備投資の意欲回復だ。

 

 対面サービス業を中心に経済の流れが活発化し、結果として個人消費が増加するという試算になっている。

 

 その一方で懸念されるのは電気代だ。項目では電灯総合単価という記述で説明されているが、継続して高く付く傾向を見せている。

 

 化石燃料の輸入価格増加が大きな原因だが、加えて再生可能エネルギー賦課金も上昇するというダブルパンチにより1円あたり29.7kWという高値にまで至ると予想されている。

 

 

グラフ

 

 

 エネルギーの需要は経済成長に伴い微増するという予測が立てられている。

 

 原子力・石炭・再生可能エネルギーに対しては今後の供給量増加が見込まれているが、一方で大きく落ち込みが見られているのは天然ガスである。

 

 これは主に発電用の需要が冷え込むと予想されているからである。

 

 増加が見込まれるエネルギー需要の中に石炭が入っている事から分かる通り、ほぼ微増の需要が見込まれる石油と合わさってCO2排出に対してはやや後ろ向きな見方となっている。

 

 化石燃料転換を行わない場合は排出量の低減に大きく寄与することは無いと見られており、経済成長に対する効果的な対策の必要性が迫られている。

 

 

グラフ

 

 

 燃料としてはLNGが非化石電源として減少傾向にある一方で再生可能エネルギーを筆頭に石炭や原子力が伸びを見せる。

 

 都市ガスは工業用こそ大きく伸びたものの家庭向けとしては減少傾向であり、燃料油は復活しつつある航空業界の需要を受けジェット燃料や軽油が好調となる見込みだ。

 

 そして気になる家計のエネルギー消費額であるが、+3.2%と増加の見込みである。

 

 夏季と冬季において家計の支出額が変化する事もあり、このまま支出額増加が続く傾向に待ったを掛けられる政策の出現が望まれるとの事であった。

 

 

グラフ

 

 

 懸念事項となっている石油価格については1バレルあたり10ドル上昇/低下の試算が出されたが、双方ともに業界に与える影響が大きくなる事は避けられない。

 

 そんな中で原子力発電が電力コスト削減やエネルギー自給率の問題解消、気候変動対策に貢献出来るという試算が出されており、再稼働を大きく望む声をもって発表を終わる形となった。

 

 

グラフ

 

 

(IRUNIVERSE ICHIMURA)