今回の日本の自民党総裁選は、台湾でも注目のニュースとして報道されている。その争点は、「台湾はCPTPPへ参加することができるのか」ということだ。台湾において今回の自民党総裁選が注目された最も大きな理由は、日本がCPTPPの交代議長国でことであり、CPTPPへの参加を望んでいる台湾からすれば、できる限り台湾に友好的な首相の誕生を熱望しているということの表れといえるだろう。

 

 総裁選前の段階では、4人の候補者は全て台湾のCPTPPへの参加について友好的な見方を示していると報道されていた。台湾では、日本国民も次期首相の台湾CPTPP加入の意見について注目しており、「台湾のCPTPPへの参加を支援するかどうか」はオンライン政見発表においても注目の議論の一つとなっていたと報道されている。この点、日本のニュースとの取り扱いとの温度差はどうだろうか。

 

 国家開発評議会のGong Mingxin(中国語名:龔明鑫)議長は、岸田氏当選後の9月30日、台湾のCPTPPへの参加の成功率について「慎重かつ楽観的に見て、50%を超える」との見方を示した。さらに、産業別では、CPTPPへの加入は、台湾のEV発展にとって大きなチャンスになるだろうということだ。これに対し野党からは中国との関係を懸念し否定的な意見が出されている。

 

 Gong Mingxin議長は9月30日、立法院にて事業報告を行い質問に回答した。CPTPPの加盟は自動車産業へ影響を与えるとした上で、業界とのコミュニケーションのために積極的にセミナーを開催していく。一方で、台湾にとってはEVを発展させるチャンスでもあり、新しい産業の始まりになる可能性がある。台湾は2050年までに正味のゼロカーボン排出量を達成することを計画しており、さまざまな省庁が関連する計画を行っている。非常に高度な挑戦であるものの、台湾EV産業の発展、そして新たな産業の獲得に向けてこの機を逃すべきではないとのことの見方を示した。

 

 また、Gong Mingxin議長は中国のCPTPPの参加に対し、中国国内の状況は把握していないが加入基準から判断すると中国の参加にはまだ大きな問題がある。台湾としては、二国間開放や市場協議を含め、参加基準を十分に満たす入念な準備を行い、参加に向け備えるとした。

 

 今回の総裁選では、全ての候補者が台湾のCPTPP参加を支持していたということで、岸田氏の当選が確定した際の報道も落ち着いていた印象だ。今後、どのような人事が行われるのか、その人事を台湾寄りだと判断するのか。ここ数日の日本の動きと共に、台湾におけるその報道にも注目したい。親日で知られる台湾だが、CPTPPの加入が実現すれば、親日度合いが今以上に増すことは間違いないだろう。

 

 余談となるが、台湾には岸田氏の曽祖父が100年以上前に営んだ店が現在もあり、今回の当選を機に注目を集めている。台湾での報道によると、岸田氏の曽祖父である岸田幾太郎は1895年から1899年にかけて台湾北部に位置する港湾都市基隆を開発した。優雅なヴィクトリア朝様式の建物で、現在はレストランと本屋になっている。当時の地図には「岸田呉服店」「岸田喫茶部」と掲載されていたということだ。台湾では岸田氏の「親台」を象徴するニュースとして、大きく報道されている。

 

 

写真

GoogleMap より

 

 

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i.YUKO

写真 IRuniverse取材記者、フリーライター、フリーランス通訳/翻訳者(日‐中)

 2017年より台湾在住。3児の子育てをしながら、手作り食品の販売等、さまざまな活動を行う。

 趣味は、手芸、石鹸作り、台湾料理研究、旅行。

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