米国ではバイオ燃料事業に関して、石油メジャーのシェブロンが石油業界以外との結び付きを強めている。持続可能な航空燃料(SAF)ビジネスで大手IT企業のグーグル及びデルタ航空と提携したほか、バイオメタンで米リサイクル大手とJV(合弁)プロジェクトを立ち上げる予定だ。さらには、穀物メジャーのブンゲと事業提携に踏み出すなど、脱炭素化に向けて攻めの経営に転じる。

 

 シェブロンの子会社シェブロンU.S.A.の製品部門とグーグル、デルタ航空はこのほど、SAF燃料排出の見える化を図るため、クラウド技術を用いたSAFのテストバッチ排出データ追跡で提携することに合意した。バイオマス由来の原料からエルセグンド製油所(精製能力は日量26.9万バレル)で製造したSAFをデルタ航空のロサンゼルス国際空港に売却するものをテストバッチとする予定だ。

 

 シェブロンはまた、米国のグローバル・リサイクル会社であるブライトマークとバイオメタンJV(合弁)プロジェクト「ブライトマークRNGホールディングス)の規模拡大に合意したことを8月下旬に明らかにした。酪農廃棄物からバイオメタンを生産するJVの2025年における生産量を20年比で10倍に引き上げる計画という。

 

 このほか、シェブロンU.S.A.とアグリ事業を手がけるブンゲ・ノース・アメリカは9月はじめ、SAFの原料調達から給油に至るまで、広範囲にわたる事業で提携することに合意した。ブンゲはルイジアナ州デスターハンとイリノイ州ケアロに均等出資のJVを設立し、大豆油処理施設を建設する予定だ。

 

 シェブロンが攻めの経営に打って出た背景には、脱炭素の動きが世界的な潮流となっていることに加え、新型コロナウイルス感染拡大で悪化していた業績が回復に転じたことがある。同社が7月末に発表した2021年第2四半期の業績は、前年同期の純損失82.7億ドルから30.8億ドルの純利益となった。

 

 こうした状況下、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにする目標を掲げるバイデン米政権は9月9日、航空関連のGHG排出量を30年までに20%削減する目標を公表した。米国では現在、航空機分野(国内便及び米国発便)のGHG排出量が運輸部門全体の11%を占めている。

 

 米政府は民間航空機などがSAFを増産することで、SAFの供給量を現在の年450万ガロンから30年までに30億ガロンにまで増やす。そのため、関連企業などに43億ドルを資金支援する。バイオ燃料部門でも官民挙げての取り組みが活発化している。

 

 

在原次郎

 Global Commodity Watcher