台湾では現在、観光工場の開発に力を入れています。経済部は「観光工場自在遊」ホームページで台湾全土の観光工場を紹介している他、各自治体が特設サイトを作って多くの観光工場を紹介しています。観光工場を通じて産業を観光化することで、消費者と企業との距離を縮めることができるだけでなく、体験による販売の効果を上げ、収益アップにも役立っているそうです。台湾の主要産業として「半導体」は自覚されている方が多い印象ですが、その他LIBや鉄鋼業などについては知らない人も多く、観光工場への訪問や体験が改めて自国である台湾の技術を知るきっかけになっているようです。

 

 

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勝昌製薬外観              妙煌マーケティング本部長 蘇博煌氏と

 

 

 その中でも今回は、台湾中壢にある勝昌製薬の観光工場に訪問してきました。観光工場は、実際の工場と同じ敷地内に作られています。勝昌製薬中壢工場はCostco中壢店の横に位置しており、広大な敷地に巨大な抽出路などを構えています。現地では妙煌マーケティング本部長である蘇博煌氏にお話を伺いました。

 

 

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Googleマップより 勝昌製薬 衛星写真

 

 

写真 勝昌製薬は1946年に設立、設立当初は生薬粉、丸薬・粉薬・膏薬・練り薬を生産していたそうです。後に現代漢方薬濃縮製剤の生産に乗り出し、台湾における濃縮漢方薬を代表する企業に成長しました。製品は医薬界で幅広い評価を受けており、世界各国に輸出されているそうです。2018年には日本の独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のPIC/S GMP認証を獲得。台湾には製薬会社がありますが、PMDA 認証を取得しているのは勝昌製薬だけだということでした。2020年には今回訪れた観光工場である「勝昌中草薬探索館」を設立し、漢方薬の知識をさらに多くの人に広めています。

 

 勝昌製薬には、TAF ISO 17025とTFDAという二つの国際認証を受けた実験室があります。少し前には、ニュースで、市場に出回っている漢方の残留農薬や偽物が混ざっているといったが問題となりました。そのような問題に対しては、高い技術を持つ検査施設にてしっかりと検査を行い、安心安全な漢方を製造しているということでした。

 

 

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勝昌製薬 ホームページより

 

 

 漢方の有効成分を抽出するためには、高い技術が必要です。写真のろ過装置は地上4階の高さがあり、効率的に有効成分を抽出することができるそうです。

 

 

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勝昌製薬 ホームページより

 

 

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工場の様子は、壁一面のポスターで知ることができる。

 

 

 台湾では、漢方=中薬、いわゆる薬=西薬と分けられています。東洋医学が漢方、西洋医学が薬というイメージです。日本で「漢方」と聞くとあまりなじみがないかもしれませんが、薬局に並んでいる薬の中にも、意外と漢方は多いのです。漢方は植物、動物といった自然の原料から抽出されているため、化学薬品を使用した薬と違って、腎臓に負担をかけないのが特徴だそうです。しかし、天然だからこそ、「抽出に時間がかかる」「効果がわかりにくい」というマイナスイメージを持っている人も多いのが現状です。勝昌製薬では独自の高い抽出技術で有効成分を抽出し、服用しやすいように工夫を凝らして加工をされているそうです。いくらいい材料を使っても、抽出技術によって抽出できる有効成分の量は大きく異なり、効果にも大きな差があるそうです。漢方は、やはりとても奥深い世界だなという印象を受けました。

 

 

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「勝昌中草薬探索館」の様子
さまざまな漢方原料、製造方法について解説しているほか、製品も展示している。
本物の漢方原料を手に取って見ることのできるコーナーもある

 

 

 台湾人の間では、「日本の薬は安心・安全」「日本に旅行に行ったら薬を買ってくる」とよく聞きます。しかし、このように台湾から日本に漢方や薬の原料が輸出されているというのはとても意外でした。こんなところからも、台湾のもつ技術の高さをうかがい知ることができました。まだまだ、知らない世界が広がっていそうな台湾、また新たな世界をレポートしていきたいと思います。

 

 

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i.YUKO

写真 IRuniverse取材記者、フリーライター、フリーランス通訳/翻訳者(日‐中)

 2017年より台湾在住。3児の子育てをしながら、手作り食品の販売等、さまざまな活動を行う。

 趣味は、手芸、石鹸作り、台湾料理研究、旅行。

 *通訳、翻訳および台湾案内等のご要望は、MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話よりお問い合わせください。

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