写真 欧州ELV指令下に設置されている拡大生産者責任スキーム(EPR)の遂行を担うベルギーの生産者責任組織(PRO)FEBELAUTOは、国内におけるELVに関する抹消登録や解体などのデータ管理を行なっている。

 

 欧州では、ベルギーの隣国オランダのように、生産者責任組織が、ELVの回収ネットワークを構築、解体業者や破砕業者と契約し、ELVリサイクルの管理を行なっている国もあるが、ベルギーのFEBELAUTOについては、ELV情報のIT管理が主要活動となっている。処理に関しては、「市場のニーズ」に任せ、直接介入は行なっていない。組織の活動資金については、自動車輸入業者から徴収する資金が充当されている。

 

 EUは現在、欧州グリーンディール政策の下、域内の輸送セクターの電気化に尽力しており、近い将来大幅なEVの上昇が予測されている。これに伴い10年から15年の後には、使用済EVの数も急増することになる。そのため、現在欧州の自動車リサイクル業界では、きたる使用済EV時代に備え、対応への準備が始まっているところだ。

 

 EVと化石燃料車の解体処理における最も大きな違いは、EVの稼働用電池とその取り扱いにおける安全性の問題である。そのため、これまでとは異なる技術や設備が必要となり、自動車解体技師への研修や訓練などを開始している。ベルギーでは、現在、指令下に定められた認定処理施設(以下ATF)が、使用済自動車の処理を行なっているが、EV用の電池を取り扱う業者については、別の認定基準を満たす必要がある。この認定を受けた業者にはATF+というタイトルが与えられる。今回、IRuniverseでは、この認定基準を開発したFEBELAUTOへ取材、会長を務めるCatherine Lenaerts氏に話を聞いた。

 

 FEBELAUTO は、ATF+となる条件を記載した「FEBELAUTO NORM©︎」と呼ばれる基準を2020年4月に発行、現在は規制により、この基準を満たした業者に対し、EVおよびハイブリッド車用の稼働用電池の取り扱い資格(ATF+)が与えられることになっている。

 

 この基準が適用されるのは、自動車ディーラー、EV用電池ディラー、解体業者など使用済EVの回収ポイントとなる業者だ。解体業者が、回収も同時に行なっている場合は、回収業務と解体業務を別途に申請し行う必要がある。

 

 「FEBELAUTO NORM©︎」では、主に以下のような内容について、それぞれ義務事項が記載されている(内容一部)。

 

  • 必要な法的認可を全て受けていること
  • 作業現場における事故や損害に対する保険への加入
  • EV用電池の管理(リスク管理、独立した保管場所の確保)
  • EV用電池を取り外す際の条件(生産者による明確なスペックの必要性など)
  • 使用済EV 用電池における情報と登録システム
  • FEBELAUTOに対する電池の回収・受領、電池の化学物質、重量などの情報告知義務(3ヶ月ごとに電子による報告書の提出)
  • 作業時における安全基準
  • EV用電池の取り扱いにおける安全性についての指示
  • 保安保護具
  • EV用電池の輸送と輸送用の梱包基準
  • 作業員に対する研修や訓練義務

 

 承認を受けたATF+は、2年ごとにFEBELAUTOあるいはEBELAUTOに委託された第三者によって「FEBELAUTO NORM©︎」基準が常に維持されているか、検査を受ける必要がある。検査結果により、調整や改善などが必要な場合は告知を受ける。もし基準が保たれていなかった場合は、一時的あるいは永久的なATF+ステータスの取り下げとなり、事業活動を継続できなくなる。

 

 現在、ベルギーには120件のATFが存在しているが、ATF+として認可を受けた業者は、7月の時点で5件だという。加えて申請中の業者が4件あるため、これらが加われば、9件となる。この数字について、少ないのではという問いに対し、「まだ準備開始段階です。使用済EVが本格的に増加するまでには、まだ十分な時間があり、それまでには準備が整うでしょう。最終的に、現在のATFは、全てATF+となる必要があります」とLenaerts氏は述べた。

 

 使用済EV処理における最大課題は?との問いに対しては、「電池を扱う上での作業上の安全性を確保することが最も重要なことですが、これはトレーニングを行い、安全対策を徹底することで解決できるでしょう。その他については、特に大きな課題があるとは思いません。これまで、ELVリサイクル業者は、多数の自動車モデルの変換に対応してきました。これまでの経験を活かし、EVへも対応していくでしょう」と語った。

 

 

【取材協力】Ms.Catherine Lenaerts, Director, FEBELAUTO, Belgium
【参考資料】FEBELAUTO NORM©︎ (ベルギーFEBELAUTO提供)

 

 

(Y.SCHANZ)

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

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