東京商品取引所(TOCOM)が液化天然ガス(LNG)先物取引の新規上場に向けて動き出した。今年9月初旬に監督官庁の経済産業省に対し、認可申請を行う見通しで、2022年4月にも取引開始を目指す。(写真はYahoo画像から引用)

 

 アジア地域では今後、LNGの短期・スポット市場の 拡大が見込まれている。LNG スポット価格のヘッジニーズや発電マージンの固定化ニーズの 高まりを受け、TOCOMが上場を予定するLNG先物は北東アジア向けLNGスポットカーゴの指標価格である Platts JKM2を対象とした現金決済型の円建てとなる。

 

 ところで、TOCOMがLNG新規上場を計画したのは10年近く前まで遡る。2014年7月には、世界最大級のデリバティブ(金融派生商品)取引所であるCMEグループ(シカゴ)のリオ・メラメド名誉会長がに来日し、安倍晋三首相(当時)に対し、日本がLNG先物市場を創設する取り組みをCMEグループとして支援すると表明。LNG上場への機運が高まった。

 

 今般、ようやく上場申請まで漕ぎ付けたわけだが、なぜそんなに時間を要するのかについて、日本の先物取引制度のあり方を問題視する専門家も少なくない。日本の先物市場では建玉制限があり、期近物が中心限月となる欧米市場に対し、日本市場は期先物中心の取引となる。また、円建てで取引されるため、海外投資家にとっては為替ヘッジが必要になることや、英語を介しての意思疎通がうまくいかないことなとが指摘されてきた。

 

 さらに、新規上場に対する監督官庁のスタンスもある。米国先物市場では「5商品を上場して1商品が取引活況となればよい」とされ、取引を開始した上でその後の状況を見極めれるというスピード重視の姿勢が主流となっている。

 

 これに対し、日本の場合、新規上場して取引活況とならず、すぐに上場廃止となった場合、商品先物取引を管轄する経済産業省や農林水産省の監督責任が問われるという消極的な姿勢が指摘されてきたのも事実だ。「小さく生んで大きく育てる」という日本式発想が間違っているとは言い切れないが、先物取引に対する基本的な考え方が欧米とは根本的に異なっている点も見逃せない。

 

 脱炭素社会への移行が世界規模で進むなか、石炭火力の代替としてLNGが注目されている。TOCOMは、現在上場している電力、原油・石油製品の先物にLNG 先物が新たに加 わることにより、電力と発電用燃料をワンストップで取引できる「総合エネルギー 市場」の環境整備が一層促進されると強調している。


 

在原次郎

Global Commodity Watcher