原料に国産ナフサが18年10-12月の高値更新見通しで、電子部材、マスク材料まで値上げへ

 石油化学の基礎原料である国産ナフサ価格が急騰としている。国内の石油化学製品の価格は輸入ナフサの2ヵ月遅れで算定される国産ナフサ価格(四半期ベース)をベースにしたフォーミュラと付帯コストを加味したうえで価格交渉が行われる。コロナ禍のロックダウンの影響で原油市況の急落、需要の減退で20年4⁻6月期の国産ナフサ価格は1キロリットル25,000円まで急落した。

 

 その後は緩やかな上昇過程にあったが、21年1-3月には同38,800円に上昇したが、前年同期を下回る水準であった。これが4-6月期には同50,000円に上昇が見込まれ、7月初めまでの海外スポット市況が更に上昇しており、このペースが続くと7-9月の国産ナフサ価格は同55,000円前後と直近の高値である18年10-12月の同54,200円を上回る可能性が高まっている。

 

 

グラフ

 

 

 今回の価格上昇は18年当時よりも急激であり、国内石油化学製品の値上げ交渉も21年春に続き、6月以降の第二弾の値上げとなる。春の値上げは21年2月の北米の寒波による石油化学プラントの操業停止や原料となるシェールオイル掘削機(リグ)の稼働の低下による需給のタイト化が永続している点が18年時点と異なる。コロナ禍からの需要回復過程でもリグの稼働が上がらず、原油市況もOPECプラスの協調減産などの動きもあり高値で推移するとの市況要因が加わったことで、「今回の国産ナフサ価格の上昇は重層的で大きな上昇率となる点が18年当時とは異なる」(樹脂加工メーカー)との見解であり、値上げには従来にも増して真剣みが感じられる。

 

 樹脂加工品は 6 月~7 月出荷分からの値上げ打ち出しとなっており、その対象は樹脂添加剤、半導体ウエハ出荷用容器、フェノール・エポキシ銅張積層板の電子機器類の部材から壁紙、カーペットの住宅建材関連、食品用ラップ、食品容器、マスクの原料でもある不織布まで幅広い分野に及ぶ。値上げの幅は 15%~20%超の値上げとなる。

 

 化学系や非鉄・特殊鋼系は価格フォーミュラが構築されており、値上げの浸透は時間の問題となっている。ポイントは半導体ウエハ出荷用容器、フェノール・エポキシ銅張積層板や電子部品用の樹脂など値上げが交渉に依存する部分が大きな製品の値上げがどこまで浸透するかがポイントとなる。なお、18年の半導体ウエハ出荷用容器の値上げの実現率は限定的であったとの経緯がある。自動車、産業機械はじめ多くの機器類は半導体、樹脂製部品、配線板、コネクター、機器用電線の使用が欠かせないだけに、これらがコストアップ要因となる加工組み立て産業への影響がどの程度かが今後のポイントとなろう。

 

 

(叶 真一)