三菱重工グループの三菱重工エンジニアリング(MHIENG)と英国の大手電力会社Draxは6月10日、Draxが英国ノース・ヨークシャー州に保有するバイオマス発電所から二酸化炭素(CO2)を回収するBio Energy with Carbon dioxide Capture and Storage(BECCS)プロジェクトにおいて、MHIENG 独自のCO2回収技術を長期使用することで合意し、このほど契約を締結したと発表した。(写真は三菱重工業のサイトから引用)

 

 世界最大規模となる今回の脱炭素化プロジェクトは、植物由来の燃料を使うことによりCO2排出量をカーボン・ニュートラルにできるDraxのバイオマス発電と、排ガスからのCO2回収技術を組み合わせ、商用規模における世界初のネガティブ・エミッション(CO2排出量が正味マイナス)実現を目指すものだ。

 

 MHIENGとDraxはバイオマス発電所を対象にCO2回収パイロット試験を2020年秋から実施しており、米国における世界最大のCO2回収プロジェクトを実現したMHIENGの実績や、多種多様な排ガス源に対応できる技術力、最新の改良型CO2回収技術が評価されたものという。MHIENGは今回、CO2回収ライセンスの供与、プロセス設計および設計・調達・建設(EPC)役務を支援するほか、吸収液の供給なども担う。

 

 2030年までにカーボンネガティブ企業になることを目標に掲げるDraxにとって初となる今回のBECCSユニットは、24年中に同発電所内で建設を開始し、早ければ27年にも稼働を開始する予定だ。年間のCO2排出量を世界最大量となる約800万トン以上(現在世界最大量である北米プロジェクトの約5倍相当)削減可能であるため、COP26の議長国である英国政府が掲げる2035年までのCO2排出量78%削減という目標の達成に大きく貢献することが期待される。

 

 MHIENGが今回提供するCO2回収技術Advanced KM CDR ProcessTMは、MHIENGと関西電力(KEPCO)が共同開発したもの。MHIENGがこれまで納入した商用のCO2回収プラント13基全てで採用されているアミン吸収液「KS-1TM」に技術改良を加えた「KS-21TM」が採用され、KS-1TMと比べて再生効率に優れ、劣化も少ないといった特長があることから、運用コスト改善など経済性の向上も期待できるという。プロジェクトはノルウェーのモングスタッドCO2回収技術センター(TCM:Technology Centre Mongstad)で実証試験を行っているKS-21TMの実用化第一号となる。

 

 三菱重工は、2021年7月1日付でMHI-EMEA(欧州・中東・アフリカ三菱重工業)のロンドン本社に脱炭素事業の拠点として「Decarbonisation Business Department(DBD)」を設置し、英国におけるCarbon Capture and Storage(CCS)サプライチェーンの強化を検討していることも明らかにした

 

(IRuniverse)