豪Minderoo Foundationは先週、全世界のプラスチック廃棄物の発生源に関する分析結果を発表した。公式ページによると、まず前提として、使い捨てプラスチックは、年間生産されるプラスチックの3分の1以上を占めており、その98パーセントが化石燃料から製造されているとのこと。また、全世界の使い捨てプラスチック廃棄物の半分が、僅か20のポリマーメーカーによって生産されているという興味深い調査結果などが報告されている。

 

 Minderoo Foundationは、鉄鉱石事業などで有名な豪Fortescue Metals Groupの会長Andrew Forrest氏と、その妻であるNicola Forrestが設立した非営利団体。今回のレポートは細部にわたって調査されているようで、80ページ超えの大作となっている。

 

 なお、このレポートには、先に述べた生産メーカー以外にも、こうした使い捨てプラスチック廃棄物に多額の投資を行なっている大企業や、そこから利益を得ている銀行などが多数名指しで紹介されている。大企業らに、行動を省みて、早急な変革を促す狙いがあるものと思われる。

 

 生産メーカー、機関投資家、銀行など金融企業の3部門に分かれて、それぞれ使い捨てプラスチック廃棄物への依存度、貢献度(?)の高い企業20社がそれぞれ紹介されているが、生産メーカーでは、米ExxonMobile、米Dow 、そして中国のSinopecが、上から順に、“使い捨てプラスチック廃棄物を最も多く生み出している企業”トップ3の座を占めている。この3社で全世界の使い捨てプラスチック廃棄物の16パーセントを占めているそうだ。レポート内では、“循環型”モデルである、プラスチック廃棄物からのリサイクルポリマーの生産量は、2019年時点では総生産量の2%にも満たなかったことが明らかにされ、リサイクルポリマーではなくバージンポリマーを生産し続けるという業界の選択肢に、警鐘が鳴らされている。

 

 機関投資家の資産運用会社では、米Vanguard Group、BlackRock、Capital Groupの順に、使い捨てプラスチック廃棄物(を生産する企業)への投資額が大きい企業であるとの調査結果が報告されている。

 

 また、銀行などの金融機関を、こうした廃プラへの融資額が大きい順に並べた結果に目をやると、トップ10の中にいくつか日本企業の名が上がっている。上から順に、Barclays、HSBC、Bank of America、Citigroup、JPMorgan Chase、Mitsubishi UFJ Financial(三菱UFJフィナンシャル・グループ)、SMBC Group(三井住友フィナンシャル・グループ)、Mizuho Financial(みずほフィナンシャル・グループ)、UniCredit、BNP Paribas。なお、2011年以降、大手銀行20行がポリマー分野に融資した額は約300億米ドルにも及ぶとの調査結果も報告された。

 

 Forrest氏は、使い捨てプラスチックの生産を続けることは、地球の汚染にますます貢献しているとした上で、循環型経済への急速な移行が必要であるという立場をとっている。同氏の言葉を借りれば、これまでプラスチック業界は、“最小限の規制と透明性”で運営されてきたということだ。

 

 こうした中で、今回の調査書では、各部門へのアドバイス、要求も見られる。以下にその一部を示す。

 

・ポリマーメーカー:バージンポリマーとリサイクルポリマーの生産量と、それに伴う使い捨てプラスチック廃棄物の“フットプリント”の開示

 

・投資家と銀行:バージンポリマーと再生ポリマーの生産や、それに伴う使い捨てプラスチック廃棄物の発生に対する融資や投資のレベルを開示する。バージンポリマーの生産から、再生プラスチック廃棄物を原料とする企業へと資本をシフトする政策と目標の採用。新規の使い捨てプラスチック生産能力への投資および資金提供を完全に廃止。投資のスクリーニング基準として循環性を用いる。

 

 ただし、バージンプラスチックから脱却し、リサイクルを進めていくにあたっては、各企業のリーダーシップだけでは充分ではなく、“政治的な”大きな意志が必要とされるとも述べられている。Minderoo Foundationは、今回企業ごとの数値を明らかにしたことにより、政策立案者らはこれらの指標を用い、プラスチック廃棄物を原料とした再生ポリマー生産を義務づけ、廃棄物収集を促進するような政策や、あるいはバージンポリマーから再生ポリマーへの移行を促進するような経済的インセンティブ——例えばバージン生産への課税など、を設定することが可能になるだろうとしている。

 

 また、Forrest氏は、豪首相は国際的な議論の中でリーダーシップを取り続けるべきだとし、化石燃料を原料とする使い捨てプラスチックを手放しで受け入れるようなことはやめ、期日と共に許容できるリサイクル率の下限などを設定すべきだという意見を述べている。

 

 なお、レポート全文はこちらから読むことができる。

 

https://cdn.minderoo.org/content/uploads/2021/05/18065501/20210518-Plastic-Waste-Makers-Index.pdf

 

 

(A.Crnokrak)

 

 

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 豪州シドニー在住。翻訳・執筆のご依頼、シドニーにて簡単な通訳が必要な際などには、是非お声がけください→MIRUの「お問い合わせ」フォーム又はお電話でお問い合わせください。

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