カーボンゼロ時代のアルミニウム生産、アワードとグリーンアルミVol.14」からの続き

 

 

 世界的なコンテナ不足と、新型コロナウィルス感染症の影響から早く脱出した中国で、木材需要が急速に拡大している。そして米国では、新築住宅の需要が著しい高まりを見せている。日本同様の理由で、米国でも住宅ローン金利が低いことや、新型コロナウイルス感染症をきっかけとするテレワークの浸透などから、広いスペースを求めて都心脱出の流れが続いている。

 

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 そして郊外の住宅需要が高まりを見せる中、米国では一般的とされる中古の物件の戸数が著しく減っている。米国は、日本とは比較にならないほどオールテレワークに切り替わる業種も増加する状況となっており、そして現在、新型コロナウィルスのワクチンが行き渡り始め、コロナ収束後も切り替えると言った傾向はほぼ見られないという。その様な状況も受け、中古戸建ての需要が急増し、数が足りなくなったことから、新築着工件数は2020年12月で約167万戸(米国商務省データ)となっており、急上昇している状況だ。

 

 カリフォルニア州など地価が元々高かった場所では、すでに20%から30%の地価上昇がみられ、賃貸家賃の高騰が続いている。筆者のサンフランシスコ在住の友人によると、築年数40年3Bed roomsで2億円、3億円の世界であるという。郊外であれば、2Bed roomsの中古戸建てが日本円で6-7千万円のレンジで見つかるものの、需要の高まりに在庫が追い付かず、新築極小住宅街なども誕生している。在宅時間の増加により、郊外の一戸建てにスペースを求めて移住する世帯が増えている。

 

 その中で、つい数日前、ファイザー製ワクチンの2回目を打ち終えたということでほっと胸を撫で下ろした筆者の友人は、これでようやく家探しに専念できる、と話していた。もう一つの状況の変化として治安が悪化すると言った負の変化も手伝い、アジア人の多い人気の学区は非常に競争率が高くなっているという。日本では、治安はそれほど気にせずとも郊外の場所を選ぶこともできるが、米国などでは託児所、学校訪問など、生活周りの多くの事柄を検討しなければならないために、困難を極める状況となっている。

 

 そして米国よりも更に需要が増大している中国の影響と、コンテナ不足によって欧州からの材木の到着が遅れるケースが頻発している。すでに欧州は、航路や空路ではなく陸路を利用し、中東や欧州諸国への輸出を開始しており、更に日本への輸入が減少しているという。それら地域でも住宅マターの木材の需要が高まりを見せており、アルミニウムの需要も比例する形で増えているのである。

 

 日本では、農林水産省によると、日本の木材建築の構造材に使用される材木価格が上昇を続けている。背景にはロシアで輸入木材に高い税率を課して輸入制限を行った影響を受けて、中国が他国に輸入の道を増やしたこともあるといい、ベイマツの価格は、2020年末から価格が上昇しているという。

 

 国土交通省は、去年、2020年度の第3次補正予算で、住宅取得・リフォーム支援策としてグリーン住宅ポイント制度を予算化した。これは、一定の要件を満たす東京圏(東京圏:東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)に居住または通勤する方が(一部除く)当該地域からの移住のための住宅であることが条件であり、住宅需要を喚起し経済活性化の狙いが大きい。まさに、新型コロナウィルス感染症の影響で、落込んだ経済の回復を図るための施策といえるであろう。

 

 カーボンゼロ時代の中で、一極集中の東京圏から、その対象地域外に新築住宅を取得して移住することを検討する人は多い。その際に、一定の省エネ性能などを満たす住宅の新築または中古住宅のリフォームを行う場合などに、生活にまつわる様々なカテゴリーから選ぶことのできる商品や追加工事などと交換可能なポイントを付与する、というものだ。

 

 

 

図

国土交通省HPより

 

 

 新築住宅の購入に最大100万ポイント、既存住宅の購入に最大45万ポイント、賃貸住宅の新築に10万ポイント、リフォームには最大60万ポイントを付与する。これは、銀行ローンの減税制度など、住宅取得支援策の影響もあり、郊外の分譲住宅などを中心とし、需要喚起の意味でも明るい話題とも言えそうであるが、しっかりと下記の記載がある。

 

「必ずオンライン上で事前相談が必要です。(2021年10月10日まで)」

 

 これら住宅取得支援策には期限が設けられている。よって、今回の木材不足により生じた問題を加味してはいないということになる。住宅の着工が遅れてしまったり、建物の引き渡しができなくなる場合などの対応策などは、今後の課題となろう。

 

 

 

図

国土交通省HPより

 

 

 更にこのグリーン住宅ポイントには、住宅を購入する際、実はほとんど知られていない法改正の事項を秘めた、地理的な点以外にも、ポイント加算の条件となる住宅について記載がある。

 

→「カーボンゼロ時代のアルミニウム生産 #16」へ続く

 

出典:

 ・https://greenpt.mlit.go.jp/

 

 

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A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。