NHKの大河ドラマ「青天を衝け」の放映で、主人公の渋沢栄一への関心が高まってい る。「日 本資本主義の父」と称され、約500の企業の設立に関わった。そのうちの1社 がキリンビール。 ビール好きにはおなじみのキリンのラベルが坂本龍馬と深いつながりが あるのをご存じだろう か。(写真はキリンビールのHPから引用)

 

 現在のキリンホールディングスの前身であるジャパン・ブルワリー・カンパニーが設立されたの が明治18年(1885年)。明治21年にキリンビールが発売され、ラベルが登場したが、デザインは 全く違うものだった。

 

 ところが、明治22年、貿易商トーマス・グラバーの提案で「麒麟」を大きく 描いた現在のラベルへと変更し た。たった1年でラベルの印象は大きく変わった。この麒麟をよく見ると、顔が「龍」で体は「馬」。そこからグ ラバーと親交のあった坂本龍馬に 由来しているという説がまことしやかに伝わっている。

 

 グラバーと龍馬の関係については2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」の中で次のように描か れている。土佐藩参政の後藤象二郎によって長崎に設立された土佐商会の主任 だった岩崎弥 太郎がグラバー商会に樟脳を売り込みにいく場面だ。

 

 グラバー「私はあなたのことをよく知りません」

 

 弥太郎「それは、これから酒を酌み交わして…」

 

 グラバー「土佐藩との取引なら坂本さんに間に立っていただきたい」「彼はもっとも信用できる人 です」

 

 明治18年(1885)以降、三菱財閥の相談役に就いていたグラバー。ジャパン・ブルワリー が明 治19年に増資する際、日本の財界に資本参加を呼びかけ、渋沢など日本人9人が参加したとい う。

 

 さて、ラベルの龍馬モデル説だが、真偽のほどは定かでない。キリンのホームページによると、 ラベルは古代中国の想像上の霊獣である麒麟から採ったという。京都霊山護国神社内の泉下に眠る当の本人は「麦酒?!やはり酒ぜよ」と素っ気なく答えるような気がするのだが。

 

ジャーナリスト:沢田楊

 

㊟【コモディティと人物余話】では、特集として「麦酒今昔」を3回シリーズで取り上げます。