昨年11月から上昇見せ始め特に2月に入ってからそのピッチを上げ現在、2019年夏以来の高値を更新中のバナジウム市場。バナジウム生産各社の直近動向から状況を把握、また各報道から先月に増して期待が高まっているように伺える、レドックスフロー電池の将来需要の形について、追っていく。
バナジウム高騰のなか各社の動き
コロナワクチン普及が進捗しマクロ経済改善の見通しが立つにつれここのところ、バナジウム生産者は中期的視点を持つ余裕が出てきた。中国とインドを中心とする新興国では建設技術高度化での鉄筋需要高でバナジウム需要増、欧州では供給逼迫と、昨年11月を底にバナジウム価格は上がり続けている。
五酸化バナジウム(V205)ドル/lB FOBChina
フェロバナジウム ドル/kg EU
上図は、Technology Metals Australia社作成のバナジウム将来需給予測グラフ。2025年には需要が供給を上回る見込みとしている。
Technology Metals Australia社は2016年設立された鉱山会社で、現在は西豪Gabanintha Vanadiumプロジェクトを100%所有で運営中。
※Technology Metals Australia社株価1年 盛り上がりを見せはじめている。
価格高騰の背後で他バナジウム生産各社はどのような戦略、行動へとシフトしているのだろうか。
豪Protean Energy社は2006年設立、バナジウム電池エネルギー貯蔵システム、そして韓国バナジウム/ウランプロジェクトの開発を両軸として手掛けているが、現在、国内独立系コンサルティンググループGeoGeny Consultants Groupの支援を受けながら進めている韓国バナジウムプロジェクトは順調だとのこと。
※Protean Energy社株価 1年 少しずつ上がっている傾向
南アのBushveld Minerals社は2012年設立のバナジウム生産会社であるが、同社の2020年対中国販売シェアは2019年10%から21%の807トンに増加、また南アフリカの高品位資産からのバナジウム生産量については前年比24%増加させたとのこと。2020年12か月生産量は3631トンで、前年2931トンを上回ったとのこと。
※Bushveld Minerals社株価1年 最近は出来高も増えてきている
Vanadium Resourcesはオーストラリアと南アフリカで鉱山開発を手掛けるが、現在南アフリカで低コスト高収益のプロジェクト開発に注力している。また、同社に対するバナジウム需要は順調に増加しており長期的需要も堅調とのこと。
※Vanadium Resources株価 堅調な順調を表したような株価推移
レドックスフロー電池本格化の気配
将来生産本格化するのかどうか、各所で予測が揺れ続けていたレドックスフロー電池であるが、期待を寄せる声が高まってきているようだ。
最近のRoskill見立てによれば、2025年までのVRFB(バナジウムレドックスフロー電池)向けバナジウムは31,000トンに増加、10年では3,100%の増加が予測されるとのことである。
(Roskill提供資料)
さてここでも、各社の動向から市場の流れを探っていきたい。
豪Atlantic Vanadiumは西豪ウィンディムラバナジウムプロジェクトを100%所有運営する会社であるが、同社はVRFBの将来需要増への備えを戦略に据える。2020年にはバナジウム全シェア中0.3%だったバッテリー部門での需要が2025年までに50%、すなわちバナジウム全体需要が現在比2倍以上となると見込み、2023年までに99.6pcグレード材料を7,600トン/年量生産可能体制を構築する準備に入っているという。
カナダLargo Resourcesは1988年設立、主にブラジルでバナジウム生産事業に携わっているが、同社もまた既に、VRFB需要への対応を進めているという。昨年12月にはVRFBビジネスとして子会社ラルゴクリーンエナジーを立ち上げ、一般製品の3倍の電力密度を持つというVCharge±バッテリーシステムの開発生産を進めているとのこと。
※LargoResources株価1年 昨年12月以降活発化
以下では他、バナジウム大手の株価を確認。
※中国最大手Pangangグループ(四川省)株価1年
※ロシアEVRAZ社株価 1年
(IRUNIVERSE USAMI)