第4次エネルギー基本計画の「エネルギーミックス」は達成目標となる2030年までの実現が急がれる。事実バイオマス発電のFIT認定量が急増している。ところが、バイオマス発電の燃料となる木質ペレットが海外から大量調達されることが、国内外で問題視されている。国際環境NGO「FoE Japan」の満田夏花氏がオンライン報告会「燃料生産の現場で何が起きているのか〜カナダの事例から学ぶ」の中で、大規模バイオマス発電の問題点を指摘した。
(満田夏花氏/FoE Japan)
■バイオマス原料輸入は環境破壊
FIT(固定価格買取制度)が導入された2012年以来、日本のバイオマス発電の認定量が急増している。中でも突出しているのが廃棄物ではない一般木質などの燃料。満田氏は「この内のほとんどが輸入原料である点が問題だ」と指摘する。
大規模なバイオマス発電は燃料を国内の端材や間伐材で賄うことはとうていできない。近年は輸入の木質バイオマス、PKS(パーム椰子殻)、パーム油などが急増している。FITが始まった2012年当初は200万kWあまりだった導入量が、2019年末には1085万kWと5倍にも膨らんだ。その内訳は大部分が一般木質やバイオマス液体燃料が占めている。
木質ペレットでは、2012年から2019年の間で特にカナダとベトナムからの輸入が急増し、全体で161万トンに達した。
(出典:経産省「バイオマス持続可能性ワーキンググループ」2020年8月資料1)
(出典:「バイオマス白書2020」より)
■原料輸入が急激に増加
今後の見通しとして、木質ペレット輸入の契約を交わした燃料メーカーは下表のとおり。大口なのは米国のエンビバ社とカナダのピナクル・リニューアブル・エナジー社だ。
(報道資料よりFoE Japan作成)
エンビバ社は今年と来年から15年の長期契約が始まるとみられ、毎年15万トンから63万トンの木質ペレットが輸入されるという。
現在確認できる4社の輸入リストの合計は年間200万トン。2019年の時点での合計161万トンが2倍以上に膨れ上がる計算だ。
■カーボンニュートラルのトリック
日本国内では新た大規模バイオマス発電所がこの2~3年で次々と運転開始が予定されている。わかっているだけで10基、合計で年間379万トンの輸入木質ペレットを消費するという。
(報道資料よりFoE Japan作成)
満田氏が繰り返し述べるのが「バイオマス発電が実はカーボンニュートラルではない」点だ。バイオマス発電への大きな誤解がある。伐採した木材を燃焼するとCO2は排出され、温室効果ガスは増える。万一相殺される場合があるとすれば伐採元の土地が数十年~100年後に森を復元した場合のみ。そこまでの年月をかけて初めてカーボンニュートラルとなる。
(木質バイオマスというと、製材所の端材が使われるイメージが強いが、実際は原料の80%が丸太木材を使用する)
それにもかかわらず、計算上はCO2排出量がゼロとみなされるのは事実に反している。伐採された土地が農地や宅地に転用されれば、永遠にCO2は回収されず、温室効果ガスの削減にならない。
加えて、海外から輸送時に排出されるCO2量については、これは計上されない。コンテナ船で運搬する際のCO2排出は膨大で、カナダから輸入した場合、国内からの調達と比べて7倍のCOが2排出されるという報告もある。
燃料別・産地ごとのGHG排出(森林の減少と劣化・燃焼を含まず)
(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成)
バイオマス燃料の温室効果がガス(GHG)は、燃料となる作物の栽培と加工、輸送だけで天然ガス(LNG)を超え、石油に匹敵するケースもある。アフリカやトルコなどの遠隔地から植物油や大豆油を調達した場合などだ(上グラフ)。
■生物多様性も破壊
バイオマス燃料を海外調達する問題は、CO2だけにとどまらない。資源伐採によって生物多様性が破壊され、食料との競合も懸念される。カナダのブリティッシュコロンビア州では絶滅危惧種のカリブーなどの野生動物が大きく影響を受けている。
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満田氏は「バイオマス発電は、国内の地産地消レベルで行うことが本来の姿。小規模分散型であれば輸送時のCO2発生もわずかに抑えられる」と述べている。
森林から木材を根こそぎ伐採するのではなく、あくまで端材や間伐材に留めるのでなければ本来のバイオマスエネルギーの目的から逸脱してしまう。
(IRUniverse fukuiN)