欧州理事会(European Council)は14日、ウクライナのEU加盟に向けた協議を開始することを決定した。

 

ロシアによるウクライナへの侵攻後、ウクライナ側は同国のEUへの加盟要請を重ねて行なってきた。だがロシアを過剰に刺激することを避ける目的もあり、EUは返答を先延ばしにしてきた。だが、戦争がすでに2年目が近づこうとしているなか、EUはやっと重い腰を上げたようだ。

 

昨日の決定において、加盟各国の首脳からなる欧州理事会は、ロシアのウクライナに対する行為は、国連憲章に違反するものだとし、EUによるウクライナの国家主権・領土の維持と独立を強く支持することを改めて強調した。また、同国に対するEUによる政治・経済・人道的援助の継続についても改めて確認した。なお今回の決定では、ウクライナの他にモルドバ共和国のEU加盟交渉を開始することを決定している。

 

今回の欧州理事会の決議投票の際、EUの「問題児」の一人であるハンガリーのオルバンは、退出することで、投票を行わなかったと報じられている。ハンガリーが否決すれば、満場一致が必要となる決議は可決されない。そのため、事前にオルバンが退出するというシナリオがドイツをはじめとする西側の首脳の間で作られ、交渉済みだったと地元メディアは報じている。オルバンは、以前からロシアのプーチンとの関係が取り沙汰されており、ロシアへの支持を隠していない。今回の決議に対しては、「ハンガリーは正しい決定と判断しておらず、決議には参加していない」とコメントしている。

 

ウクライナとモルドバがEUに加盟することになれば、EU領域が大きく広がることになり、欧州の政治・経済にも大きな影響をもたらすことになる。今回の決定はロシアを苛立たせることは間違いない。ただし、EU加盟承認までの過程は、当事国との交渉・審査が続く「果てしなく」長い道のりだ。例えば、当事国において、EU法との調和化が必要な国内法についての査定があり、これには通常1年から2年が必要だ。その後も最終決定までに満場一致による承認が必要な決議を三件通過しなければならない。それには、ハンガリーのような反対派を今後どうするのかも大きな課題だ。だがとりあえず、賽は投げられたようである。

 

 

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SCHANZ, Yukari

 オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。

 趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。

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