先日、警備大手のSECOMが、ドローンを使っての事業について大々的に発表した。実は同じ大手のALSOKも、既にショッピングセンターなどでドローンの運用は始めているが、そもそも論であるが、ここまでドローンの運用を急がせるには業界特有の理由がある。それは、給与の低さと労働対価が合っていない理由からくる、警備員の成り手の不足である。

 

 以前、MIRUでも、警備大手「ALSOK」の記事を掲載させていただいたご縁があったが、YouTubeで、ある転職系ユーチューバーも、「警備業はいかない方が良い業界」などと言われるほどの業界である。

 

 以前、2号警備、つまり交通誘導警備業がAIの活用について話し合われるニュースが放送されたが、この場合も、需要に対し、警備員が足りない、または入ってこない状況にあるという状態がそこにある。

 

(警備大手SECOMが発表した、SECOMドローンXX。慢性的な人手不足解消の一手になるか。同社HPより)

 

中抜き商売と大手からの天下りの受け入れ

 

 各業種で、人手不足という物が起きているが、警備業もその一つで、その理由としては先ほどお話しした、待遇の低さである。中には待遇が良い会社もあるが、全体的に人手不足が謳われる警備業は、その大半が、給与と実務の対価が見合っていないと言われてしまうほどの現状である。

 

 結論から言うと、これは経営者の問題と言っていい部分が多い。

 

 この問題を紐解くと、これは一部の警備業者は、いわゆる大手の「下請け」をメインとしている企業もある。

 

 実は、大手2社には「OO会」という名の組織がある。これは、いわゆる大手と下請け会社が組織化したもので、下請け業者が、この組織に入るには、数億円という補償金を、大手に支払うという決まりがある。(私が聞いた話は10億円の補償金を支払うと、この組織に入れる)

 

 その見返りとして、大手の仕事を、下請けとしてその企業がもらえるという仕組みである。当然「中抜き」された金額で下請けに流される。

 

 下請け業者から見れば「営業しなくても勝手に仕事が入る」ので楽なのである。つまりは、営業という仕事を担っている上層部が楽をするという仕組みになっている。

 

 こうして中抜きされた金額で、その仕事を請け負った下請け企業は、社員に対し、安い金額で雇うしかない。結果、最低賃金、ボーナス無し、昇給無し、退職金無し、という会社が出来上がってしまう。

 

 更に残念なのは、そこで働く人間も、「ほかに当てがない」という高齢者が多く存在し、いつ病気で倒れてもおかしくない人たちに現場を任せるケースもある。もちろん健康であることに越したことは無いのであるが、例えば忌引きや、病欠と言った場合、最低ぎりぎりの人数で、現場を回しているケースが多いので、一人がコロナにかかった、などの場合、残ったほかに人たちで回すため、一人が10連続勤務など、一人いなくなると、残った一人に負荷がかかるという構造になってしまうのだ、

 

 当然、若い社員は、そのような企業の状態を見て、すぐにやめて自分の可能性を求めてその現場を辞めて、残った人間はもう後がないような人たちが残ってしまうという構造ができてしまう。

 

 対して、大手とのつながりを保ちたい下請け企業の上層部は、次々と大手を退職した元副社長や支店長を雇い、顧問や部長代理、惨事と言ったポストに就く。

 

 ここで問題なのは、警備員の収益構造である。つまり、警備員というのは、その場所に人間が立って、初めてお金が発生するという構造なので、例えば天下りで入った人間が外で警備員をする人間ならばいいが、実際は「営業部長」という肩書だけで、勝手に仕事が入ってくるものだから、何もしなくても金をもらえるという役員がどんどん増えていく。いわばごく潰しである。

 

 その陰で、連日38度を超える真夏でも汗を流しながら、交通誘導業を11時間の長い拘束時間で行う現場の人間が、月16万円ももらえない現場が存在したりする。こういった問題が、「警備員なんかやりたくない」という意識を持たせ。「だったらAIやドローンにやらせろ」という声が上がってしまうのだ。

 

 

続く

 

 

(by K.H)