米国史上初の債務不履行(デフォルト)に陥る期限が迫るなか、米下院は2023年5月31日夜(日本時間6月1日昼前)、債務上限の適用を一時停止することや歳出削減などを盛り込んだ「財政責任法2023」を可決した。これによってデフォルト回避に向けた第一関門は通過し、今後は上院での採決に回避の舞台が移る。

 

議会での一般教書演説を前にマッカーシー下院議長と握手するバイデン大統領

 

 法案の内容は5月27日にバイデン大統領とマッカーシー下院議長が基本合意した内容に基づいている。下院が公表した法案の概要によれば、債務上限は大統領選挙後の2025年1月1日まで適用停止され、2025年1月2日に限度額を引き上げて猶予期間中に発行された債務に対応する。これによって米政府は債務支払いに必要な資金調達が可能になり、デフォルトに陥ることを回避できる。この問題が大統領選挙に絡まないようにすることで双方の思惑が一致した。

 

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 支出削減では、非防衛費関連の支出を2024財政年度までほぼ現状に維持し、2025財政年度については約1%までの増額を認める。2025財政年度より後については予算に限度を設けない。このほか、コロナ禍の対策で計上された費用のうち未使用の約300億ドルを取り消すことや、復員・退役軍人向けの病院や医療保障は維持すること、食料給付券を受けている成人に対する一時的な就労要件拡大、コロナ化で猶予されていた学生ローンの支払いの再開などが盛り込まれている。インフレ抑制法に基づいてバイデン大統領が進めている脱炭素社会実現に向けての税額控除施策に関連する支出削減は含まれておらず、法案が上院でも可決されれば、日本を含む多くの自動車メーカーが注視していたEV購入に対して最大7500ドルの税額控除をする施策も維持される。

 

 バイデン大統領は5月31日に出した声明で「今夜、下院は史上初のデフォルトを防ぎ、我が国が苦労して獲得した歴史的な経済回復を保護するための重要な一歩を踏み出した。この予算合意は超党派の妥協案だ。どちらの側も望むすべてを手に入れてはいないが、それが統治することの責任というものだ」と述べた。

 

(IRuniverse 阿部治樹)