ロシアによるウクライナ侵攻開始から半年が過ぎた。戦線は膠着状態に陥っているものの、交戦国間に和平の意思がないため、戦争は長期化している。戦争が長引くのと同時に、その余波も長期化の様相を呈しており、日本はじめ西側の多くの国はロシア産化石燃料の代替を探すことに血道を上げている。年内に戦争終結への道筋をつけられなければ、ロシア産化石燃料無しで厳しい冬を乗り越えなければならなくなり、ロシア産天然ガスに依存してきたドイツでは、対ロ制裁を疑問視する声も出始めているという。

 

 こうした中で、リビアから明るい話題が届いた。リビア石油公社は21日、同国内における化石燃料生産が回復してきているとの所見を明らかにした。それによると、原油生産量は、1日約120万バレル(サウジの10分の1程度)に及ぶという。また、同国東部に位置するファーリグ・ガス田での天然ガス生産量が、1日約149mcf(百万立方フィート)に達したということだ。ロシアは、EU向けに出荷できなくなった天然ガスの一部を燃焼し処分しているとも推測され、ある推計では約4mcm(百万立方メートル)に達するというが、149mcfをmcmに換算すると大体この量に等しい約4mcmとなる。侵攻以前、ロシアは1日あたり400~500mcmもの天然ガスをEUに輸出していたとされるので、このガス田だけでその100分の1を賄えるわけだ。

 

 一方で、ウクライナを巡る対立が、リビアにも暗い影を落としている。リビア東部を勢力下に収めるリビア国民軍はロシアの支援を受けてきており、その指導者ハリーファ・ハフタルはプーチン支持を表明してきた。ハフタルはリビア産化石燃料の出入口を締め上げる力を持っている。6月頃、リビア国民軍とその支持者はハフタルの命を受けて、石油などの輸出港、油田を封鎖した。そして、リビア石油公社は、いくつかの油田における生産停止を表明せざるを得ない状況に追い込まされていた。それから1カ月以上が過ぎた24日、イタリアの半国営ガス会社エニの最高幹部は、イタリアの企業群によるリビアへの投資を表明した。これは勿論、イタリア政府によるロシア産天然ガスの埋め合わせを探せという命を受けての動きである。ただ、東部の政府は、石油関連施設の封鎖が相次いだこの時期、エニへの引き渡し量を4分の1にすると明らかにしたことがある。イタリアはリビア紛争において、トルコと並び西部の暫定政府支持派であり、東部の敵対勢力にあたる。この投資案にも不安が付きまとう。

 

 リビアはまだ、安定しているとは言い難い状況にある。本来、去年12月に実施される予定であった選挙は未だ、延期され続けている。国連のリビア特使は今月、対立する東西の各勢力に”歴史的妥協”を呼びかけたが、状況は進展しなかった。リビア選管トップは、昨年の選挙を中止に追い込んだ「不可抗力の終結」を宣言した。しかし27日、首都トリポリで、現職大統領派の民兵集団と東部の影響下にあるとされる民兵集団の間に戦闘が発生した。多くの民間人を含む数十人の死者を出し一旦戦闘は終結したが、東西内戦の再開を危惧されている。リビアの化石燃料はヨーロッパにとって冬に向けた希望の灯の一つであるが、安定性という面で頼みの綱とするには心もとないのが現実だ。

 

 

(Roni Namo)