PHP新書で「ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略」を著した遠藤誉さんの書籍が今日本屋さんで目に留まった。帯に“軍冷経熱‐狂気のプーチン、笑う習近平”と書かれている。新聞の情報ではなかなか入手できない遠藤さんの独特の視点で描かれている情報は我々素人には中々知ることができない中国事情の内情や米国のバイデンさんが副大統領時代にからウクライナに関わっていた事など興味深い情報である。特に驚く点は、プーチンの狂気を引き起こした誘因に米国が関わっているとの論点である。

 

 米国が何故ウクライナにかかわっているのだろうか?又何故中国がウクライナに関わっているのだろうか?

 

 ロシアの軍事技術の重要な基盤を持つ国がウクライナであった。ロシア崩壊後ウクライナの軍事産業の技術者を招いた国が中国であった。ウクライナはロシアの軍事技術の3割を占め、機械製造、冶金、燃料動力産業、ハイテク部門に精通し、特にロケット装置、宇宙機器、軍艦、航空機、ミサイルなど非常に重要な軍事技術を保有していた。ウクライナは旧ソ連の地対空ミサイルの62%、戦略ミサイルの42%を生産していたと。

 

 そんな訳で、中国はソ連崩壊後のウクライナ技術を導入して軍事技術を整備し中古の軍艦までウクライナから購入した。それが中国初の空母「遼寧」である。ウクライナの黒海には旧ソ連の造船所6ヵ所の内3ヵ所はウクライナにあったと。軍事技術の空の部分と海の部分はウクライナが占めていた訳である。

 

 ここまで判ると何故プーチンが狂気になったのか、非常に判り易くなる。

 

 ここで中国とウクライナは同じ共産圏でロシアの軍事技術を保有し、更に習近平の一帯一路の終着場所の中で、最も存在感のある国として中国は、欧州の入り口のウクライナを重視して、軍事力だけでなく友好関係を築いてきた。

 

 政治的に強大な一党独裁の中国の存在を強化を目指す習近平政権の戦略は経済的な優位性で世界の覇権を握る事が基本中の基本の戦略で、その政策が一帯一路である。そこで更に経済的に優位を築こうとしている矢先にウクライナ侵攻が始まってしまった。

 

 プーチンは、北京オリンピック、パラリンピックが終わると同時に2月25日ウクライナ侵攻を開始した。その背景が判ると、中国の習近平はプーチンと友好関係を築いた後の出来事に、さぞかし驚いたであろうと推測できる。

 

 ウクライナはそんな世界の覇権を狙う国々のまさに今接点であったと判る。では我々産業人は、これからの世界をどの様に理解して、自らの立場を考えたら良いのであろうか?

 

 

(Katagiri)