日本政府は8日、ロシアのウクライナ侵攻に対する制裁措置として、石炭を加えた。日本の石炭はそのほとんどを豪州からの輸入に依存しているが、ロシア産の石炭も、豪州より近距離かつ小ロットで取引ができるコストパフォーマンスが良いものとして一定の輸入量を保ってきた。

 

 財務省の貿易統計によると、2021年における日本の「無煙炭」輸入量の合計は、605万1360トンで、全体54%を占めるオーストラリアの326万1582トンが最も多かった。ロシアは31%を占める187万3943トンで、オーストラリアに続く2位となっている。3位はシェア11%のベトナムで66万6920万トン、4位はシェア4%の中国で24万5212トンだった。

 

 

 

 

 金額ベースでみると、日本への輸入量の合計額は998億7994万円だが、こちらも全体の56%を占めるオーストラリアの554億8284万円が最も多い。ロシアは、27%を占める264億5936万円で2位だった。3位はシェア11%のベトナムで113億8302万円。4位はシェア6%の中国で64億1889万円だった。

 

 

 

 

 一方コークスなどに利用される「歴青炭」の輸入量の合計量は、1億6840万トンで、68%を占めるオーストラリアの1億1527万トンが最も多かった。続いて多いのは11%を占めるインドネシアで、1829万トンだった。ロシアはインドネシアに続く3位で、シェア率10%の1755万トンだった。

 

 

 

 

 金額ベースでみると、合計額は2兆5723億5608万円で、全体の70%を占めるオーストラリアの1兆7863億6381万円が最も多かった。次に多いのは、11%を占めるインドネシアで、2751億5246万円だった。ロシアはインドネシアに続く3位でシェア率10%の2521億7775万円だった。以降はシェア率5%のアメリカで1136億7648万円、シェア率4%カナダで1118億9817万円と続いた。

 

 

 

 

 一般に日本のロシアからの石炭依存度は約1割といわれているが、取扱量は少ないものの、無煙炭のシェアが3割あり、その依存度が高いことがわかる。無煙炭は、燃焼時にほとんど煙や匂いを出さないため、主に家庭用煉炭やカーバイトの原料に使用されるが、重量あたりの発熱量が多く、不純物も少ないことから、セメントキルンなどの投入燃料などにも用いられている。

 

 石炭業界の関係者によると、国内のセメントメーカーではこれまでセメントキルンへ投入する無煙炭の調達先をベトナムや中国を頼ってきたが、両国とも近年石炭の輸入量が輸出量を上回ってきたため、ロシア依存を高めてきているという。

 

 この点についてセメント業界関係者は、「セメントキルンへ投入する無煙炭はわずかです。直ちに問題が発生するわけではありません」と話した。

 

 無煙炭は瀝青炭と比べて高値だが、取引量が瀝青炭より桁違いに少ない。そのため仮にロシアからの輸入が滞ったとしても、セメント業界に与える影響は軽微だといえそうだ。

 

 

 

(IRUNIVERSE ISHIKAWA)