第5次制裁パッケージ案を提示するフォン・デア・ライエンEU委員長

 

 

 EU代表者会議は4月7日、ロシアからの石炭輸入を禁止することで合意した。エネルギー関連品目では初の禁止となる。ロシア軍によるウクライナの一般市民虐殺行為が明らかになったことを受けて、EU委員会(政策執行機関)が5日に公表した第5次制裁パッケージ案の第1項にあったものだ。パッケージには他に、4つの主要銀行の取引全面禁止、ロシア関係船舶のEU域内の港の利用禁止など5項目が含まれており、順次承認合意される見通しだ。

 

 代表者会議はベルギーのブリュッセルで開かれ、現地からの報道などによると、石炭の輸入禁止は8月中旬以降から有効になる。当初は、賠償問題などが起きないよう既存の石炭購入契約期限が切れる3カ月後が提案されていたが、ドイツから1カ月先延ばしするよう要請があったという。大多数のEU諸国はスポット市場でロシア炭を買っており、制裁が有効になるとこれらの輸入が停止することになる。EU委員会はこの制裁によってロシアは年間40億ユーロ(43億6000万ドル)の収入を失うことになるとしている。

 

 フォン・デア・ライエン委員長の声明によると第5次制裁パッケージの他の5項目の中身は以下の通りだ。

 

第2項:ロシアの主要4銀行の全面取引禁止。この中にはロシア2番手のVTBが含まれ、これら4行への制裁によってロシアは銀行取引の23%を失うという。

 

第3項:ロシア船およびロシア運行の船舶のEU域内港の利用禁止。農産物・食料といった生活必需品、人道上の必要物資、エネルギーを除く。加えて委員会はロシアとベラルーシの陸上輸送の禁止も提案している。

 

第4項:ロシアが脆弱である分野の物品の輸出禁止。これには量子コンピューターや先進半導体、精密機械、輸送機器なども含まれる。100億ユーロ(108億9000万ドル)に相当するこの措置によってロシアの技術の水準と産業の能力を低下させるという。

 

第5項:特定品目の輸入禁止、55億ドル(59億9000万ドル)相当。対象は木からセメント、海産物から酒類に及び、これによってロシアとロシアのオリガルヒ(政商富豪)、ベラルーシへの抜け穴をふさいで金の流れを断つ。

 

第6項:様々な狙い撃ち手段。この中には、EUメンバー国の公的調達制度におけるロシアの会社の参加禁止や、ロシアの公的機関へのあらゆる財政支援からの排除も含まれる。EUで納税された金をいかなる形であってもロシアに行かせないのが目的だ。

 

 声明ではさらに、制裁対象に新たに加える個人リストがあること、ここからまた追加する制裁が考慮されているとも述べている。とりわけ石油の禁輸についても検討していると述べられているのが注目される。

 

 EUのほかにアメリカやイギリス、G7もウクライナ市民虐殺を引き金に、より厳しい制裁を発動し始めており、ロシアの外堀は次々と埋められつつある。

 

 

(IRuniverse 阿部治樹)