G7とEUは3月11日、ロシアへの追加制裁を発表した。ロシアへの最恵国待遇(MFN)の取り消しが含まれており、ロシアからの輸出には高い関税がかけられることになった。3月9日発表のEUの追加制裁には鉄鋼関連製品などの取引制限も含まれていて、ロシアはさらに苦しい状況に置かれることになった。一方でプーチンは、海外への債務支払いを「紙切れ同然」となりつつあるルーブルで行うことを認めた。

 

 ベルリンで11日に発表された「G7Leaser’s Statement」によれば、各国は引き続きロシアの世界経済からの孤立化を進めるとして7項目の追加制裁を行うことにした。その第一に挙げたのが、ロシアの主要産物に対するMFNの撤回だ。声明では、この措置によってWTO(世界貿易機構)のメンバーとしての重要な利益を打ち消すことになるとし、WTOの幅広い加盟国が同様の措置を準備していることを歓迎すると述べた。実際の発動は各国の法制度に従った手続きの後になるが、除名処分の規定がないWTOからの実質的排除を目指す。実施されれば各国はロシアからの産品に対して高い関税をかけて輸出の制限を行うことができる。すでにカナダは取り消しを行い済みで、ロシア産品に対して35%の関税を課している。アメリカも議会の承認手続きに入った。

 

 日本の岸田首相も声明に沿う形での対応策をとるとの考えを示している。ただ、ロシアからの大部分を占める原油とLNGは基本税率がゼロで、MFNを取り消しても関税はかからないという。対象となるのは魚介類や木材とみられている。特定の産品に対して関税を上乗せする方法も考えられるが、これには法改正が必要になる。EUは今後、具体的な対応に取りかかるが、すでに鉄鋼や鉱物性燃料、たばこ、木材、セメント、ゴム製品などの生産・製造に関わる品物の取引を制限している。ロシアからの原材料が一層手に入らなくなるのが、これでより明確になった。

 

 ますます包囲網が厳しくなり、SWIFT遮断などでドル建て取引が事実上不可能になっているロシアは苦し紛れともいえる策に出た。プーチンは3月5日、ルーブルでの対外債務返済を認める大統領令に署名したのだ。大統領令は、ロシアとロシア企業・国民に敵対的活動・立場を取っている国の債権者への対応を定めたもので、ルーブルをロシア中央銀行の公定レートで支払えば債務履行とみなすという。これはデフォルト(債務不履行)を避けるためとみられるが、下がり続けているルーブルでの支払いは無理筋であることは言うまでもない。ウクライナ侵略前の2月23日では1ドル81.15ルーブルだったのが3月15日には112.5ルーブルに。1カ月足らずで38%の暴落だ。ロシアのスーパーではルーブル札をばらまく人もいたという。まさに「紙切れ」になり下がっている状況と言える。

 

 3月16日には利払い期日が来る1億1700万ドル相当のドル建てロシア国債がある。これにはルーブル支払いを認める条項はないという。デフォルトと認定される危険性は限りなく高い。

 

 

図

 ドルなどとの公定レートを決めるロシア中央銀行のウエブサイト

 

 

(IRUNIVERSE 阿部治樹)