アメリカのバイデン大統領が8日、ロシアへの追加制裁としてロシア産の原油や石油製品、液化天然ガス(LNG)、石炭の輸入を禁止することを明らかにしたが、日本政府はこの動きにすぐには同調せず対応を慎重に検討する方針だ。

 

 日本政府の対応について松野官房長官は9日午前の記者会見で「米国がロシア産原油等の禁輸措置を取ったことは承知している。我が国としては、今後の状況を踏まえつつ、G7をはじめとする国際社会と連携をして、有効と考えられる取り組みを、適切に検討・対応していきたい」と述べた。7日の参院予算委員会では岸田首相も「エネルギーの安定供給は最大限守るべき国益との考えに基づき、国際社会と連携しながらも適切に対応していく」と述べており、輸入禁止の早急な実施には慎重な姿勢を示していた。

 

 エネルギー分野で日本はロシア・サハリンの原油・LNGプロジェクト「サハリン1」と「サハリン2」に参画しており、2020年度の時点で、日本は輸入原油の3.6%、LNGの8.4%をロシアに頼っている。サハリン1には日本政府が50%を出資する「SODECO・サハリン石油ガス開発」に大手商社の「伊藤忠商事」と「丸紅」などが参加し、この会社を通じてプロジェクトの30%の権益を保有している。一方のサハリン2は、権益の過半数を保有するロシアの天然ガス独占企業ガスプロムとの合弁事業で、シェルが27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%それぞれ出資している。

 

 1、2からは欧米の企業が9日までに撤退を表明した。しかし、萩生田経産相は7日の参院予算委員会で、「ロシアの石油・天然ガス開発事業から日本企業が撤退することは簡単だが、その後をどこかの第三国が権益を取ってしまったら、ちっとも制裁にはならない」と述べ、撤退の考えがないことを明らかにした。また、岸田首相も同委員会で「対ロシア制裁は大きなところは協調し一致しているが、詳細についてはさまざまな違いがある。特に大きな違いがあるのは正にエネルギー分野への対応だ」と語り、ロシア産エネルギーの禁輸については、すぐにアメリカに歩調を合わせることが難しい立場であることを表明した。

 

 

(阿部治樹)