日本政府が欧米と共調して対ロ制裁措置

 日本政府は3月1日、ウクライナ侵攻という凶行に及んだロシアのプーチン大統領を経済制裁措置の対象としたことを明らかにした。対象者には過去に、過酷な民衆弾圧を続けたリビアの革命指導者カダフィや民族大虐殺の罪に問われた元ユーゴスラビア大統領のミロシェビッチらが含まれる。欧米諸国と足並みをそろえた措置だが、日本はプーチン大統領を人道に反する罪を犯した独裁者らと同列に置いたといえる。この措置を含め、日本政府がウクライナ侵攻以来、ロシアと親ロシア派に対して実施を決めた制裁措置をまとめておこう。

 

 措置はいずれも、「外国為替及び外国貿易法」(外為法)に基づく。

 

 ロシアに対しての措置は3月1日付のものが、⑴資産凍結、⑵特定団体への禁輸、⑶軍事転用が考えられる品物の禁輸。

 

⑴の対象となったのは個人6人と銀行3行。個人は、ウラジミール・プーチン(大統領)、セルゲイ・ラヴロフ(外務大臣)、セルゲイ・ショイグ(国防大臣)、ワレリー・ゲラシモフ(ロシア軍参謀総長)、ニコライ・パトルシェフ(ロシア安全保障会議書記)、ドミトリー・メドベージェフ(同副議長)。銀行は、プロムスヴャジバンク、VEB.RF(ロシア対外経済銀行)、ロシア連邦中央銀行。これら個人と銀行に対しては、支払い規制(支払いの許可制)、資本取引規制(預金契約、信託契約及び金銭の貸し付け契約の許可制)が実施される。

 

⑵特定団体に指定されたのは49団体。主なものは、株式会社アドミラルティ造船所、国防省通信センター、連邦保安庁、株式会社カザンヘリコプター修理工場、株式会社ロケット・宇宙センター「プログレス」、株式会社機械工学中央研究所、コムソモリスク・ナ・アムーレ航空機製造工場、参謀本部情報総局、国防省、モスクワ物理・技術大学、航空機製造会社ミグ、株式会社スホイ、株式会社ツポレフなど。いずれも侵攻遂行に深い関りを持つ団体だ。これらに対しては、まず3月8日から輸出に係る支払いの受領を禁止する。

 

 親ロ・分離独立派が樹立したと称する「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク(ロシア語はルガンスク)人民共和国」に関する措置は2月26日付で、⑴資産凍結、⑵両「共和国」からの禁輸、⑶ロシア政府による日本での新規証券の発行・流通禁止、⑷ロシアの特定の銀行による日本での証券の発行禁止、⑸国際輸出管理レジームの対象品目のロシア向け輸出の禁止等の5本立て。

 

⑴の対象は両「共和国」の指導的立場にいる個人24人とロシアの1団体だ。個人では、ウラジミール・ビデョフカ(自称・ドネツク人民共和国人民議会議長)、アレクサンドル・アナンチェンコ(同・ドネツク人民共和国首相)、オリガ・マケエヴァ(同・ドネツク人民共和国人民会議副議長)、レオニード・パセチュニク(同・ルハンスク人民共和国首長)、デニス・ミロシュニチェンコ(同・ルハンスク人民共和国人民会議議長)、ドミトリー・ホロシロフ(同・ルハンスク人民共和国人民会議第一副議長)ら。ロシアの団体はバンク・ロシア。これらの個人・団体には支払い規制と資本取引規制のが実施される。

 

⑵では、ウクライナ政府が発行するウクライナ原産であることを証する原産地証明書等の提出がある場合を除き、輸入承認は行われなくなる。⑶では、ロシア政府と政府機関による日本での新規証券の発行・募集の許可制、これら証券の譲渡の許可制と発行・募集の役務の許可制を実施する。⑷は償還期間の短い証券(30日超)を対象とする。大量破壊兵器や通常兵器の不拡散を目的とした国際輸出管理レジームに絡む⑸では、ロシア向け輸出と役務の提供について審査手続きを一層厳格化するとともに輸出の禁止措置を導入する。

 

 

図

 

 

 財務省の「経済制裁措置及び対象者リスト」(2022年3月1日現在)には、アフリカや中東などでのテロや大量殺戮に関与した人物の名前がずらりと並んでいる。超大国ロシアの現職元首らがそうしたリストに加えられたことの異常さを、ロシアの人たちはどう感じているのだろう。断片的にしか伝えられないが、ロシア国内で身の危険にさらされながらも侵攻反対の声を上げている人たちの起こしたさざ波がうねりになることを願わずにはいられない。

 

 

(IRUNIVERSE 阿部治樹)