世界各地の紛争地でドローンの役割が急速に増している。従来、航空戦力というものは、少なくとも国家規模の財政力、人員がないと創設、保持が困難であった。しかし、ここ数年で小型の無人機であるドローンが急速に普及し、その常識を塗り替えている。それに伴い、潤沢な資金をもたないテロ組織、武装勢力でも航空攻撃が可能となった。さらに、メキシコの麻薬カルテルといった犯罪組織による悪用も報告されている。

 

 ドローンの進歩は日進月歩であるが、目下、軍事用ドローンの世界最大の実戦テストの場となっているのが中東である。中でもイランはドローン開発を急速に進め、ヒズボラなどの傘下勢力に供与し実戦で使用させ、ノウハウを積み上げている。イランと敵対するサウジアラビア、UAEはイラン傘下勢力による定期的なドローン攻撃に曝されている。両者ともイエメン紛争に介入し、イランが支援するザイド派系武装勢力(通称:フーシ派)の標的となってきた。

 

 2020年、サウジアラムコの石油施設が、イエメンから飛来したドローンとミサイルによる攻撃を受けたことは記憶に新しい。イエメンからは以前もフーシ派によるミサイル攻撃が続いていたが、ドローンを組み合わせ、なおかつ1000㎞以上離れた目標に攻撃を実行できたことで耳目を集めた。この攻撃は、”高価”な空軍を動員せずとも、敵国の中枢に被害を与えることが可能であると示した。UAEでは、先月17日、燃料輸送タンカーが攻撃を受け、3人が死亡したと伝えられた。UAE当局は、フーシ派がドローンを用い実行したとしている。UAEは国土全体がイエメンからは遠く離れているが、これ以前から行われていたミサイル攻撃とあわせ、フーシ派の攻撃からは免れないことが明らかになった。

 

 こうした中、そのUAEでは23日まで、攻撃用ドローンなどが一堂に会する第5回無人技術展(UMEX)が開催された。本展示会は、UAE防衛省などが主催するある種の国家事業だ。UAE高官は、本展示会開催にあたり、テロ組織によるドローン使用が、一般市民への重大な脅威となっていると述関連べた。”攻撃側”だけでなく、イスラエル企業が本展示会で初お披露目したというロケット型の迎撃システム「Sky Inercepter」のように防衛システムも注目された。

 

 主催者発表によれば、今回は26各国が参加し、防衛産業大国イスラエルや国産ドローンで急速に注目を集めるトルコも新たに出展したように、無人機関連では世界屈指の展示会に成長している。センサー、認識技術などドローンの基礎技術は、やはり欧米など先進国に一日の長があるが、幸か不幸か、火種が多く不安定な中東は軍事利用のための実験場としてこれ以上ない環境だ。今後も、中東から思いもよらない利用法、新兵器が出てくるであろう。

 

 一方、プーチンが大方の予想を覆しウクライナへの本格的な軍事侵攻を開始したことで、ウクライナ軍がどのようにドローンを使用するのかが注目され、国際情勢に暗い日本のメディアでさえも議論するほどである。この戦争の顛末の如何に拘わらず、戦場におけるドローン使用からますます目が離せなくなる。

 

 

Roni Namo

 東京在住の民族問題ライター。大学在学中にクルド問題に出会って以来、クルド人を中心に少数民族の政治運動の取材、分析を続ける。クルド人よりクルド語(クルマンジ)の手ほどきを受ける。日本の小説のクルド語への翻訳を完了(未出版)。現在はアラビア語学習に注力中。ペルシャ語、トルコ語についても学習経験あり。多言語ジャーナリストを目指している。