2022年1月19日から21日までの3日間、東京都江東区有明にある東京ビッグサイトにてRX Japan株式会社主催の「第36回 ネプコンジャパン」が開催された。
今回の展示会は実地開催となっており、合計6種の展示イベントが同時開催されるという規模の大きいものとなっている。
今回の記事では出展者のうち株式会社リビングロボットの開発した製品にフォーカスしていく。
手のひらサイズの可愛らしさ
皆様はメカトロウィーゴというロボットを知っているだろうか。
プロモデラーであり3DCG作家の小林和史氏が制作されたガレージキット(個人制作のプラモデルの様なもの)がその出発点であり、そのデザインや世界観の設定は一定のファンを獲得するに至る人気を持っている。
その後玩具やプラモデルといった形で関連商品が販売され、多くのクリエイターが独自の塗装を施したり改造をするなどして親しまれている製品だ。
そんなメカトロウィーゴを「動かす」事が出来るとしたらどうだろうかという試みに挑戦し、製品として展開しようとしているのが株式会社リビングロボットだ。
この片手で握れる小さなロボット「あるくメカトロウィーゴ」の可能性について取り上げていく。
最大限のリスペクトとそこから生まれた変態技術
メカトロウィーゴのデザインに親しんだ人ならば気づくだろうが、このあるくメカトロウィーゴは原典のメカトロウィーゴに対して胴体部分や足回りが随分とマッシブになっている。
これは重心を下げ、バランスよく直立出来る様にする他に様々なパーツを内蔵する都合上この様なデザインになったという。
元々のデザイナーである小林氏にもデザインの変更について打ち合わせをし、許諾を貰った上での生産というから原作者へのリスペクトも忘れていない。
このあるくメカトロウィーゴは先述した通り直立する事が可能で、これは片足と両腕を上げたいわゆるトの字の様なポーズであっても問題なく直立出来るだけのバランスの良さが特徴だ。
勿論これはただ関節が稼働するだけではなく、文字通り「歩く」事を可能としている。
専用のプログラミングソフトでロボットの行動を調整する事が出来、これはパズルの様に命令文を組み合わせられるビジュアル的に分かりやすい作りとなっている。
このソフトと本体に搭載された各種センサーやカメラを用いて、大雑把ではあるが目標までの距離や環境の光量によって行動を分岐させるといった事が可能だ。
歩く動作についても、おもちゃの様にシャカシャカと足を動かすすり足動作ではなく、ゆっくり足を上げて足の裏から接地し前進するというモーションの拘りようである。
また無線通信を行う事で自分の手で操縦する事も可能という多機能ぶりであり、カメラを通して手のひらサイズのロボットの視界から周りを見ることも出来るという。
このあるくメカトロウィーゴ、開発スタッフとしてシャープ株式会社が開発したRoBoHoN(ロボホン)に関わるメンバーが参加しているとの事である。
そのため歩行モーションの拘りもそうであるが、それ以上にこの小さなロボット内にきちんと配線を行い各種センサーを搭載しバランスを取るといった人型ロボット製作に必要な技術がふんだんに使われている。
CPUとバッテリーについてもほぼギリギリのラインで稼働できるスペースが作れる製品を搭載している。担当者いわく詰め込む事に相当苦労したという話である。
このあるくメカトロウィーゴには、カメラの他にマイクとスピーカーも搭載されている。
それにより第三者が接続したあるくメカトロウィーゴに話かける事で、このロボットを通して相手と会話する事も出来てしまえる。
勿論ビデオ通話の様な機能はないが、腕を上げたり動いたりと様々なジェスチャーを取りつつ音声でのコミュニケーションを行う事が出来る。
この機能性もまた、ロボホンの系譜に連なるものと言えるだろう。
このあるくメカトロウィーゴは現在福島県伊達市の教育機関を中心に導入が進んでおり、さらに対象となるエリアや団体を拡大していくという。
メカトロウィーゴの本体に塗装をしたり、授業でプログラミングを学習するといったカリキュラムを経た上で「自分だけのメカトロウィーゴ」を持つとの事だ。
デザインの良さから男子女子を問わず人気となっており、子どもたちの間ではデザイン性の高さを競う事も行われているとかいないとか。
「人とロボットが共に生きる」を合言葉に邁進する株式会社リビングロボット。
これからの教育現場にロボットが浸透していくその貴重な一歩を、今後も「歩いて」開拓して頂きたい所である。
( IRUNIVERSE Ryuji Ichimura )
( (C)MODERHYTHM / Kazushi Kobayashi )