1月15日未明、ポリネシア地域にあるトンガ王国の北側に位置するフンガ・トンガ島近くの海底火山で大規模な噴火があった。大量の火山灰が上空を覆っただけでなく、その際発生した衝撃波の影響を受け、トンガの町に限らず、海を隔てて接している日本や米国にまで数時間後に1m以上の津波が押し寄せた。

 

 フンガ・トンガ島付近では、昨年12月20日に煙の高さが10km程度の噴火を確認。その後一旦弱まったものの、1月14日に煙の高さが30kmまでのび、煙の大きさも約3万平方kmまで広がった。今回の噴火は、火山の規模を、0から8まであるレベルで測る「火山爆発指数(VEI)」でみると5~6程度といわれ、規模的には、1991年に6月に噴煙高が40km、煙の大きさが13万平方kmあったVEI6のフィリピンのルソン島西側に位置するピナツボ火山の噴火より少し小さいと想定されている。

 

 火山の大噴火は、火山灰被害や津波の発生といった大災害を招く引き金となりえる事象ではあるが、裏を返せば、地球温暖化対策にとっては好都合な要素があるのも事実だ。例えば、ピナツボ火山の噴火時には、硫酸塩エアロゾルが3週間かけて北半球全域へと広がり、その後、1992~93年にかけて世界の平均気温は0.4度低下した。

 

 最近では、大規模火山噴火と地球温暖化に相関関係を見出す専門家も多い。その主力となっているのが、1998年に米国イリノイ大学のStanley H. Ambrose教授が唱えた「トバ・カタストロフ理論」だ。

 

 同理論の主軸は、約7万年前にインドネシアスマトラ島にあるトバ火山が噴火した際、大気中に巻き上げられた大量の火山灰が日光を遮断したことで、長期間におよぶ冷却効果により地球の平均気温が5度低下し、寒冷期が約6000年続いたというものだ。同火山の噴火レベルがVEI最高位の8であったことから、気温低下の人類への影響も大きく、この時期まで生存していた多彩なホモ属の種のほとんどが絶滅し、人類の総人口が1万人まで激減したとされている。

 

 規模が大きければ大きいほど、社会に甚大な被害をもたらすのが火山の噴火だ。専門家の分析では、トンガの海底火山噴火は、まだ収束していない可能性があるという。自然の脅威に人は無力だという前提の元、各個人が災害対応、そして地球温暖化対策について改めて考え直す時期に来ているといえそうだ。

 

 

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火山噴火と地球温暖化の関係:

 火山の噴火が起こると、大気中に火山灰や塩酸、二酸化硫黄などが増える。その際、固体・液体の成分は、雨や雪などになって大気中から除去されるが、気体成分の二酸化硫黄は大気中の水酸基と化学反応を起こして硫酸エアロソルを作り、下部成層圏に長時間とどまる。これが太陽光を反射・吸収して太陽入射を減少させる日傘効果と、地面からの赤外放射を吸収する温室効果をもたらし、地球の気候に大きな影響を及ぼすとされている。

 

 

(IRuniverse)