米国最高裁判所の判事は民主党寄りから共和党寄りへ判事の数で済にシフトした。

 

 米国の規制法の中で最も成果が示されている事例は、Clean Air Act(日本の大気汚染防止法に相当する規制)とEPA(環境保護局Environmental Protection Agency)の活動成果である。

 

 米国ソルトレイクの広大な塩湖の中にPCBポリ塩化ビフェニールを焼却する設備があった。変圧器、安定器、コンデンサーなどで絶縁体として使用されてきた油状の絶縁体で、電力設備に長期間使用されていたが、これらが使用済機器となった後始末で燃やすと大量のダイオキシンが発生する事から、世界中で問題となった時期に世界に先駆けてウエスチングハウス環境が周囲50㎞以上人家の無い塩湖に処理プラントを作った事を調査する為にソルトレイクを訪問した。

 

 そこで驚いたのは、見学の案内者の中にEPA職員も同席して、如何に安全に焼却処理を行って監視しているのか説明してくれた。実は焼却工場の隣にプレハブ施設をEPAが設置して、毎分発生するガス中のダイオキシンサンプリングと分析測定を行って二重の監視体制を構築していた。

 

 米国の大気汚染が防止できたのは実にEPAの管理システムが非常に厳しい事である。米国のクリーン・エアー・アクトは、例えば非鉄製錬所が大気中へ排出する二酸化硫黄などの排出に関しても非常に厳しく、新設設備を建設する場合EPAのルールに従って建設許可を取得する事にも何年もの時間と多額の費用が発生する。特に周囲の環境へ影響がないかを判定する環境影響評価と周辺住民の同意を得る公聴会の開催などは、時間的にも金銭的にも多くの負担が発生する。

 

 オバマ政権時代に、既に温暖化防止の為の二酸化炭素ガス排出の規制をクリーン・エアー・アクトの規制の中に組み入れた。しかし現在西バージニア州を含む4者からの訴訟が最高裁判所で議論されている。米国の最高裁判所の判事の人数の多数を占める共和党よりの意見を持つ判事が多数を占めており、強いEPAなど連邦の機関の持つ裁量権が現在議論になっている。

 

 

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写真:Neil Gorsuch、最高裁判所陪審判事、母はレーガン政権下初のEPA長官

       トランプ政権で任命された最高裁判事

 

 

 これまで決定してきた米国のルールをひっくり返す議論が最高裁判所で行われている事で、温暖化防止の米国の現政権に対する政治的な圧力だけでなく、最高裁判所からの圧力も懸念される。

 

 何でも米国や欧州を参考にしてきたにも拘わらず、日本の法制度の大きな欠点は、一度法律を作ったらその後のフォローを全くしない、フィードバック無しの管理体制だと、指摘する意見を聴いた事がある。公害問題が起こってから法律を作り、それでも再発する公害問題を防止する為の監視システムが機能しないで、忘れている国である。

 

 温暖化防止の法体系と監視システムに関する議論は日本では行われているのだろうか?一つの政党だけで運営されている国の危うさを再度見つめ直したい。

 

参考:Bloomberg Green Daily of Jan.10,22

 

 

(IRUNIVERSE Katagiri)