高純度アルミWorld2021 #16 宇宙が身近に〜民間人宇宙旅行の成功と宇宙空間でのアルミの活躍」からの続き

 

 ISSなどの国際宇宙ステーションでの滞在、そして月着陸など大きな宇宙開発プロジェクトには、高品質なアルミニウムの使用は欠かせないものとなっている。また、再生可能でサスティナブルな材料としてアルミニウムの地球内での需要が高まりを見せる中、宇宙において“宇宙ゴミ”対策にもアルミが使用されている。

 


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出典:ROSCOSMOS HP ISS 

 

 

 2021年5月、カナダ宇宙庁(CSA)は、ISSのロボットアーム「カナダアーム2(Canadarm2)」にスペースデブリ(宇宙ゴミ)の衝突痕が見つかったことを明らかにした。カナダアーム2は、全長17m、重量1641kg、7つの関節を持つロボットアームである。その表面を覆う断熱材の「肘」部分に近い箇所に直径5mmの穴が空いたという。

 

 衛星軌道には、飛来したマイクロメテオロイド(微小隕石)、岩石、ちり粒子、そして人工衛星やロケット衛星の破片など軌道上を周回し、人類の宇宙活動で生まれた宇宙空間の人工のゴミである“スペースデブリ”がある。衛星からはがれた塗装の一部もそれにあたる。今回の衝突も、位置によっては致命傷となりかねず、ステーションの運行と宇宙飛行士の命を守るために必要な対策や措置も急がれてきている。

 

 しかしながら、地球低軌道で浮遊する小型人工衛星によるスペースジブリは増え続けているという。2021年の欧州宇宙機関(ESA)発行の宇宙環境報告書によると、1cm以上の人工物は90万個以上、1mm以上は1億2800万個以上が存在すると推定されるという。飛翔体とバンパー材共に材質はアルミ合金を仮定していることから、アルミ関連の技術開発は今後も進むことが予想される。

 

 株式会社アストロスケール(創業者兼CEO岡田光信、本社・開発拠点「すみだラボ」墨田区錦糸町、他シンガポール、英国、米国、イスラエルTel Aviv計5カ国、社員140名)は、グローバルに事業を展開し低軌道(LEO)から静止軌道(GEO)までのスペースデブリ除去・軌道上サービスに取り組む世界で唯一の民間企業である。

 

 

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出典:Astroscale社 HP

 

 

 2013 年の創業以来、デブリ低減、除去策とし、寿命後の人工衛星や恒久故障の際の除去を行うEOLサービス、既存デブリ除去のADRサービス(Active Debris Removal)、衛星寿命延命措置(LEX)、宇宙空間状況把握(Space Situational Awareness:SSA)などの技術開発を進めている。宇宙機の安全航行の確保と持続可能な軌道を民間企業・団体、行政機関と協働し、宇宙開発の環境を支える活動を行う企業が日本に存在することも、注目される。

 

 今後の宇宙開発では、複数の人工衛星除去を可能とするベンチャー企業などの活動を含む民間企業の活動も期待されるだろう。宇宙開発に欠かせないアルミをはじめとした複数企業との協同が、宇宙を身近なものへと近づけ、更なる実績を生み出すことへと繋がるだろう。

 

 ロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスの報道によると、2021年12月8日から20日までの12日間にわたり国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した実業家の前澤友作氏ら3名が乗船したソユーズ宇宙船は、12月20日に無事カザフスタンに着陸を果たした。そのロスコスモスの公式サイトでは、宇宙からの圧巻の地球の様々な映像を眺めることができる。

 

http://en.roscosmos.ru/366/

 


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出典:ROSCOSMOS HP 宇宙から見た美しいブルーの海 / ロゴジン氏

 

 

 同ロスコスモス社の社長ドミトリー・ロゴジン(Dmitry Rogozin)氏は、2020年7月、中国国家宇宙局と共同で月面での科学研究基地建設を目指すことを明らかにした。旧ソ連は55年前の1966年、無人探査機ルナ9号の世界初月面着陸を成功させており、中国は2019年、嫦娥4号の月の裏側への着陸に成功している。

 

 米国は、1969年のアポロ11号の月面着陸成功後、2024年には2度目の有人月面着陸「アルテミス計画」を目指すと発表している。ロシアは2030年までには有人月面着陸を目指すとしており、世界での宇宙開発が進行してきている。そのためにも、その競争の背後にはアルミなどより過酷な環境や条件に適した材質の開発が今後もますます進んでいくであろう。

 

 そして前述の前澤氏であるが、12月13日、ニッポン放送「オールナイトニッポン」にて、「地球上で一番深いと言われているところがマリアナ海溝と言われているので、潜ってみようかと思います」と語った。

 

 深海は、宇宙と比較されることも多々あるが、宇宙以上に未だ解明されていない未知の世界と言われている。まず、水深が深くなるほど水圧が高くなり、全ての生き物にとって想像を絶する過酷な空間となる。

 

 宇宙においては気圧の変化や無重力など、多くの難題を解決するための対策や訓練が行われてきたが、深海探索はより特異な環境下に対応した機器が重要となる。深海では、有人潜水調査船、無人探査機共に、宇宙船と異なる最も大きな違いとし高水圧に耐える構造として開発を行う必要がある。

 

→ “高純度アルミWorld2021#18”へ続く

 

出典:

 ・https://astroscale.com/ja/

 ・https://astroscale.com/space-sustainability/

 ・http://en.roscosmos.ru/202/

 ・https://www.cnn.co.jp/fringe/35171711.html

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。