世界雇用者の動き

 上は20年間にわたる世界労働力の変遷を示したグラフだが、明らかにサービス業(赤)が増えていることが分かる。工業(青)はというと今10億人の水準で全然増えてきていないことから、工業分野で労働人口を吸収していくことはもう無理であることが分かる。農業も、途上国が先進国化していくにつれて今後もっと減っていくだろうと思われる。先進国の農業従事者は今、1~3%程度だから、これから農業の近代化が進めばこのパーセンテージ分をサービス業で吸収していくしかないわけだが、AIが発達していけばサービス業だって増加率はこれまでと比べて減っていくだろう。つまり、働き方の仕組みを今後10~20年は真剣に考えていく必要があることがはっきりしているといえる。

 

 労働力をスキルの観点からみた場合(下表)も、ハイスキル保有労働者とロースキルとの二極分化してきている。例えばドイツではごみ収集労働は今全てトルコ人にさせており、各国で階層化も進んでいる。

 

 

グラフ

 

 

 そしてこちらが、世界の移民受け入れ状況を示したグラフ。

 

 

グラフ

 

 

 日本は4番目の移民大国となっていて実質的にはどんどん他民族国家化してきている。岸田政権によって移民受け入れが緩和の方向に向かっていることからこれからはもっと増えていくだろう。今最も移民が多いのがドイツで130万人、人口比にしたら2割くらいとかなりの比率となる。2番目が米国の100万人で、人口比率だと3%程度。そして今急速に増えているのがスペインで、アフリカの方から多く入ってきていて60万人超えてきている状況。

 

 

グラフ

 

 

 上は生産年齢人口の予想。インドが最も伸びている。かたやアメリカは水平線となっていて労働人口が増えていない。特に2019年からは頭打ちになってきており、この予想グラフよりも実際は低位を推移している。アメリカの魅力度が減ってきていることが示されている。いずれにしろ世界的には増えず、いかに一人当たり生産効率を上げるかに今後はかかっているといえる。

 

 

グラフ

 

 

 こちらがグローバルなマネーの総量。これは2014年に出たデータでこれ以降これを示すグラフが出されていないのだが今はGDPの5.6倍のマネー量になっており異常量といえる。

 

 家計所得については、今年は「コロナだから」という理由によって厚生労働省は調査を実施しなかった。近年では特に高齢者世帯、高齢者を抱えている世帯が中央値339万円と家計が厳しくなっている。

 

 一方日本企業はというと相変わらず利益を貯蓄に回し今や企業の貯蓄はGDPの1.6倍程度。利益剰余金だけをとっても450兆円をためており異常高と言える。一方の収益性がどうかというと、収益率と資産効率は低水準でさらに低下している状況。総資本回転率も0.7倍程度と、やはりここでもデブ体質があらわ。また、キャッシュが出ると不動産を買ったりして固定資産が多いのも特徴。敵対的買収がもっと起こってきたらいくらか日本の企業体質は改善されるかもしれないと思われる。また、ため込んだ資金を設備投資にも回せておらずキャッシュフローが結構ある状態でもあり、利益を投資へまわす比率は40~50%程度と非常に低い。こう投資が低いということはデジタル投資も起きてはいないのだろう。

 

 人件費に関しては製造業、非製造業の労働人口は横ばいで、一人当たり人件費も横ばいが続いている。対して消費もしていないことから一人当たり付加価値はリーマンショック前の水準以下。特に民間の改革をすすめていかないとまずい状況だといえるだろう。

 

 

エコノミストコンセンサス

 

表

 

 

 さて、世界エコノミストによるコンセンサス予想によると、米国は来年減速の予想、3.8%となっているがこれは、もし原油が下がっていけば2%台もおかしくないだろう。新興国の中ではベトナムが来年飛びぬけてよくなる予想になっている、フィリピン、インドネシアも強い予想でおおむねASEANが強くなると世界のエコノミストはみているようだ。一方中国は減速、インドは横ばいの見通し。投資資金はこの予想に従って今、きれいに動いている状況で、日本にも結構お金は集まってきており、デジタル関係の開発関連で面白い企業がいくつかでてきていて、こういったものが海外から買われる傾向にある。

 

 

米国経済

 今、米国GDPは、実際GDPが潜在GDPに2%弱低い状況。だから、物価上昇が恒常的に続くという環境ではまだなく、FRBが様々言っているが、物価高で引き締めるようなことはないと思われる。一方米国の月次貿易バランスはものすごく悪くなっていて、92年以降最悪となった。

 

 雇用統計は失業率が、昨年14%台だったところ直近4.2%まで改善してきている。目標値3%台までもう少し。時間帯賃金はものすごく上がっているが、物価上昇を勘案するとチャラとなる水準。最低賃金も上がってきているものの、非農業部門の時間当たり実質賃金の推移では前年比マイナス。このままだともたないと思われ、消費は冬場の商戦あたりで停滞してくるのではないだろうか。新規失業保険件数は減ってきていて雇用はいい。しかしアメリカは失業保険26週で打ち切りのため27週を過ぎてまだ無職なのに無保険の人達も一定数おり、これは社会的にはよくはない。

 

 自動車販売は2019年並みに回帰失速している。景況感は高水準を維持した状態。民間の設備投資は前年比でいうとプラス10%程度。投資の面では健全となっている。消費者物価は11月で6.2%と高くなってきており特にこれはエネルギーの占める割合がアメリカは大きい。バブルといえば住宅、全国で2割くらいの上昇とすさまじく高くなっているがいまが丘の上の頂上の踊り場といったところではないだろうか。

 

 

グラフ

 

 

ユーロ圏経済

 コロナ後ユーロ圏の経済は日本と同じで大したことはない。GDPはまだ2019年の水準を上回ってない、アメリカはこの水準までは戻ったがヨーロッパはまだ。景況感でみてみると、製造業もサービス業にしても頭打ちとなっており、感染状況が直近悪い現状からはこれが再び下落に転じる可能性も十分にある。失業率は後追いでよくなってきているが今後はどうなるか分からない。消費者信頼感は2019年水準を回復している。消費者物価はさすがに上がってきて前年比マイナスから脱却した。マネーサプライは増加の後今は頭打ちとなっている。

 

 

中国経済

 あまりよくはなく、コロナでの悪化後急回復から今は後退へ向かっている。2020年3~5月が伸びのピークだったといえる。今は不動産の負債問題が大きくなってきておりまた自動車販売もよくない。消費もよくなく、消費者物価は前年比1.5%増。投資動向は急減から回復も頭打ち傾向。

 

 発電量は規制もあって、回復したものの現在は横ばい。新築住宅価格も減速傾向となっている。

 

 

グラフ

 

 

日本経済

 輸出の数量は増加が一巡。アジア向けは2019年レベルに戻ったが、ただ全体としてはピークをつけた感がある。

 

 

グラフ

 

 

 現金給与は一時的な回復があったが再び低迷となっており、前前年から大きく下がった前年並みとなっている。求人倍率は横ばいから今減速へ。日本の消費マインドは、雇用環境がよくなる期待から回復が継続している。

 

 

(IRUNIVERSE USAMI)