クリスマスの来月24日に実施されるリビア大統領選挙。リビアは最近高騰が止まらない原油の輸出国であるだけでなく、アフリカ中の難民が欧州への渡航のため押し寄せる地理的にも重要な国であり、来る選挙の行方を世界が注目している。リビアから流入する難民に苦しむEU諸国は、円滑な選挙の実施を後押しするが、選挙法の改正案が否決されるなど、具体的な実施については未確定の部分が多く不安を残している。

 

 リビア内戦は、昨年11月、対立する東西両陣営が停戦に合意し、一旦の和平にこぎ着けた。しかし、東西の対立構造は解消されておらず、選挙にもその構図が持ち込まれそうな情勢だ。リビア国民軍率いるハリーファ・ハフタルも16日、出馬を表明した。選挙も一旦停戦した東西内戦同様の構図になるのか注目される。ハフタルが支える東部の代表議会議長アキーラ・サリフも17日、立候補を表明した。出馬にあたり「紛争を終わらせ未来に目を向けよう」と呼びかけた。

 

 西部の暫定政府側からは、元内相ファティ・バシャガが16日、候補者登録を行った。一方、耳目を集めたのは、2011年の騒乱の過程で殺害された「カダフィ大佐」の息子セイフル・イスラムの出馬だ。セイフル・イスラムは既に、数カ月前より立候補を表明していたが、14日、正式に候補者登録を行った。以前メディアに出ていた際の西洋風の出で立ちではなく、故「カダフィ大佐」を彷彿とさせる民族衣装に身を包んで登場した。

 

 リビアにおける選挙と内戦には深い因縁がある。リビア内戦は、2期に分けられる。第一期は、カダフィ政権に対する抗議デモが、そのまま内戦に発展した2011~2014年だ。その後、停戦に至り選挙が実施された。世俗派が勝利するとイスラム主義者たちが選挙結果を認めず蜂起し、ここにイスラム主義者が支える西部の暫定政府と東部の議会並びにそれを支える旧リビア軍の残党が対峙する構図が生まれた。

 

 これが現在まで燻る2014年以降の第二期だ。今回の選挙もまた、東西両陣営から候補者が出馬することになり、そのいずれかが勝利することとなる。また、両勢力を支える外国勢力も背後に控えている。傭兵については、4日、カイロで撤退に向けた協議が行われると伝えられた。しかし、チャド、スーダンなどアフリカ諸国しか参加しておらず、暫定政府側に肩入れする最大の傭兵派遣国、トルコは参加を伝えられていない。ハフタルらが勝利した場合、何かしら行動を起こす可能性は排除できない。10年越しのリビア安定に繋がるか、もしくは新たな紛争の火蓋が切って落とされるか注視される。

 

 

Roni Namo

 東京在住の民族問題ライター。大学在学中にクルド問題に出会って以来、クルド人を中心に少数民族の政治運動の取材、分析を続ける。クルド人よりクルド語(クルマンジ)の手ほどきを受ける。日本の小説のクルド語への翻訳を完了(未出版)。現在はアラビア語学習に注力中。ペルシャ語、トルコ語についても学習経験あり。多言語ジャーナリストを目指している。