ソース:Record backlog of container ships hitting the US | Fox Business

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 米国ではブラックフライデーやクリスマス商戦の時期が近づく中、史上最悪規模の物流難に直面している。南カリフォルニア海事取引所が9月末にに発表したデータによれば、アメリカ西海岸のロサンゼルス港とロングビーチ港の沖合で入港を待つコンテナ船の数は過去最高記録を塗り替えた。

 

 この原因の一つが陸上運送の人手不足であり、物流の慢性的な遅延によって、米国内では需要に供給が追いつかない状況とそれに付随するインフレが続く。このような深刻な状況を受けて、10月13日にはバイデン大統領がロサンゼルス港を24時間稼働させると発表。UPSやFedExなど米国の主要物流会社も遅延を解消に向けて取り組む方針を打ち出している。

 

(関連記事)

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 この物流難はCOVID-19に対する政府規制や企業の一時解雇などの対応に起因する面も大きい。実際、2021年はじめには、両港の港湾労働者で何百人ものCOVID-19感染者が発見され、労働者不足に一層の拍車がかかった。政府の対策により、人の往来も大きな制限がかかっており、全く人手が足りていないのだ。そこに、爆発的な消費者需要が重なり、現在の史上最悪の港湾バックログという形が生まれてしまった。港の処理能力を超えた貨物量を処理しなければならず、どんどんと荷物が停滞する悪循環ともいえる。つまり、感染症対策によるシャットダウン、労働問題、設備不足など複数の要因が組み合わさって今の状況が発生しているのだ。

 

 

物流難の原因の一つは不足するトラックドライバー

 

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 現在の米国輸送遅延の背景には、消費者需要の増加、原材料の不足、工場の閉鎖、陸路輸送を担うトラックドライバーの不足、港の混雑、海上および航空輸送に対する高い需要、不十分なインフラストラクチャなど数多くの要因が関係する。サプライチェーンは人と設備に依存しており、どちらかが不足しても、遅延とコスト増が発生するのだ。

 

 特に、トラック業界に関して注目すると、AmericanTrucking Associationsでは、パンデミック前の推定61,500人のドライバー不足に比較し、現在は約80,000人不足の状態へと悪化していることを報告。さらにトラック、トレーラー、その他の機器の設備不足と、COVID-19関連の規制による移動制限が重なり、トラックの物流は大変な混乱の中にある。同業界では、2020年4月から2021年9月の間に74,500人の新規雇用があったが、この雇用水準はは2019年9月のパンデミック前のレベルより1.3%低いものである。

 

 なんとか人材を確保しようと企業側は必死であり、トラックドライバーの賃金を上げたり、サインアップボーナスなどでアピールしたりしている。トラック業界の賃金をベンチマーキングしている研究団体NationalTransportation Instituteでは、今年は運送業者がドライバーに支払う金額が平均して約8%増えるとの見方を発表。実際、一部のトラック運転手は年間45,000ドルを稼ぎ、製造業者や小売業者のために商品を移動する民間車両のドライバーにおいては、年間10万ドルをはるかに超える収入を得る者もいる。

 

 さらに、American Trucking Associationsでは、18歳の若者が州間高速道路を運転できるように試験導入する法案も支持しているのだ(現在は21歳以上のドライバーに限定)。

 

 

高額給与でも人が集まらないのはなぜか?

 

グラフ

2021年ドラックドライバーの給与データ

ソース:https://www.truckdriversalary.com/

 

 

 このように高額給与を提示されても、人手不足が解消しない裏には、トラックドライバーの過酷な就労環境が強く関係する。多くのドライバーはマイル単位で支払いが行われるため、通常、貨物の積み下ろしを待つために費やされた時間は無給になる。しかも、現在では、湾岸の荷下ろしの人手が足りず、スムーズではないために、湾岸ドライバーの待機は更に長時間化。

 

 待ち時間が長く、長期間自宅を離れて仕事をするよりは、短距離の市内ドラーバーとしてマイルを稼ぎたいと長距離ドライバーを辞める人や、COVID-19世界的大流行後の新しい生活様式の中で全く別の仕事にシフトするトラックドライバーが後をたたないのだ。

 

 現在のドライバー不足、サプライチェーンの危機がいつ終わるかについては、専門家の中でも意見が分かれている。ただし、すぐに終わる問題ではないというのが共通意見だ。早くとも2023年の初めまではこの状況が継続するだろう。

 

 この問題の難しいとことは、原因が一つではないということだ。ロサンゼルスの港の状況が改善されたとしても、道路には十分なトラックもドライバーがない。さらに、サプライチェーンの倉庫でも労働者と配達用バンの不足に悩んでいる。COVID-19の状況によっては、新たなシャットダウンや遅延を引き起こす可能性もある。

 

 この問題はサプライチェーン全体の危機であり、関連業界では抜本的な対策を迫られている。

 

 

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Y. Yamamoto

 IRuniverse取材記者、フリーライター、フリーランス通訳/翻訳者(日‐英)

 2015年より米国カンザス州在住。夫と娘二人。趣味は家庭菜園、自然観察、旅行。地域の情報誌が愛読書。

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