11月3日午後、金融専門家である川上氏によるセミナーが開催された。その内容を、「恒大問題は世界に波及するのか?」「米国株は天井、テーパリングは少しずつ、家計資産は増大、ドル安近づくか」「日本株はサービス業回復でまだ上がる余地あり」「中国経済は各指標いずれも基本ダウントレンド」「ユーロ経済はグリーンエネルギー政策が行き過ぎた反動を迎えつつある」「コモディティ 原油は年末に向かいピークアウト予想」「為替 行き過ぎた円安はこれから落ち着く方向へ」「恒大問題は世界に波及するのか?」「まとめ:世界経済」の9テーマで、前半後半の2部でポイントを紹介したい。

 

 

表

 

 

恒大問題は世界に波及するのか?

 気になる恒大問題を中心とする中国の不動産債務問題については、マイナスイメージが全体へと波及はしておらず、一部投資元にダメージが及ぶだろうが世界恐慌レベルまでいくことはないと市場は読んでいてこの先もそういった感じで進んでいきそうというところ。一部投資元というとクレディスイスなどヨーロッパのユニバーサルバンクが中国の不良債権と結構つながっているとみられていて、現在ここに関してはリーマンショックで瞬間的につけた安値を下回っていることから、中国債務問題に対する警戒感が全く解れていないということだろう。

 

 

グラフ

 

 

米国株は天井、テーパリングは少しずつ、家計資産は増大、ドル安近づくか

 米国市場ではナスダックはちょっと行き過ぎているしバリュエーションも行き過ぎている。一株当たり利益の伸び率が直近四半期の結果をみてみると鈍化してきているので、この状態が11月以降も続くとなると、10月まではよかったが米国株の成長には陰りが見えてくる可能性が大きい。クレジットスプレッドは拡大から鎮静化へ流れがきている中でトリプルCに対しては上がってきていることからも、どこもつぶれないぞという安心はピークアウトしてきていることが伺える。一方VIX指数はアフターコロナの状態続いていて今最も低い状況。

 

 テーパリングに関しては小幅で進めていくのではないだろうか。やるやると宣言しながらなかなか開始しないで周囲に免疫がついてきた頃に少しずつ開始するというのが前回のバーナンキショックからの教訓。ショックを起こして金利が上がっては困るので、本格的な引き締めは来年いっぱいはやらないのではないかとみている。

 

 ただ米の対外純債務の増え方が急になってきていて、これは相当由々しき状態といえる。アメリカの信用状況がこれから落ちていけばドル売りが近づいてくる可能性は大きい。貿易バランスもアメリカは今相当悪いし、アメリカヘゲモニーはもう終わりに近づいているともいえる。

 

 消費者面からは小売同行はよくなったが実質賃金が上がっていないからいずれピークアウトするだろう、クリスマス商戦まで持つかどうかというところではないだろうか。自動車販売台数も減ってきている。しかし緩和によってものすごいお金が今民間にたまっていて家計資産は拡大。富裕層を中心に家計への増税さえできてしまえば政府の赤字は簡単に解決できるほどだが、バイデンがこれからこれを行えなかった場合にはドルや政府への信用に疑問符がつけられることになるだろう。

 

 不動産に関しては、商業用不動産の価格は結構上がっている。住宅価格は前年同月各月+18%とバブル状態、そろそろピークアウトしてもおかしくない。

 

 

日本株はサービス業回復でまだ上がる余地あり

 日経平均に関してはこれから、コロナ制約が解除されたことで消費が良くなっていけば若干だけど上向いていくかもしれない。裁定残高が大きいと株が上がり、低いと下がるという傾向があるものだが今は歴史的に日本ではこれが低い水準にあるのでこれから日本株については増加する余地がかなりあるということも根拠にできる。動き始めたら3万いくらかまでは十分あるのでは。

 

 輸出入については2019年レベルを取り戻してきている。しかし、対中国、対米国ともに、9月頃から曲がり角にきつつある。対EUでは数量は多く保っているが機械類の輸出が減ってきていて金額は下がってきている。

 

 賃金は相変わらずの低さだが有効求人倍率は緩やかだけど回復中で、サービス業の回復に伴って消費者心理はプラス。しかしながら消費者物価指数はエネルギーをのぞくとマイナスとデフレ状態。設備投資も2019年水準には戻ってきていない。当面はサービス業回復に頼る形になるだろう。

 

 不動産価格では、オーストラリアやイギリス、アメリカ、韓国などで相当価格が上がってきている状況で、余った金が不動産に相当量まわっていることが間違いないが、日本ではなぜか不動産価格が全然上がっていない。値段が上がらないので、ブラックストーンは今日本の不動産を増やしているらしい。不動産だけでなく日本は今物価全般に関して世界的にみて非常に安く、運用によっては利回りが得られる。

 

 

中国経済は各指標いずれも基本ダウントレンド

 基本的にダウントレンド。自動車販売台数が2020年より下がっているし、消費者物価も小売売上高で上昇は止まって横ばいが続いている。投資動向も頭打って横ばいとなり前年比ではマイナスとなった。発電量についてはこれも、回復後横ばいが継続している。と、9月以降は伸び率が鈍化している。

 

 

(IRUNIVERSE USAMI)