ベルリンの巨大な広告搭に緑のジャケットの女性のシルエットと”Tschuss Mutti”, (Bye Bye Mommy)の文字が表現されていた。顔は陰で隠されているが、明にAngela Merkel首相への感謝を示すものであった。先週9月26-27日のニューヨークタイムスが伝えた。

 

 ドイツに女性の環境省が現れその女性が首相についてほぼ16年の期間にドイツと欧州全体に最大の影響力を発揮したアンゲラ メルケルさんが首相のオフィースから去る日が来た。

 

 今日10月3日の朝日新聞の論説委員が、女性の管理職として、人前で涙を流すなと入社時の管理職に言われ、メルケルさんが一度だけ涙を流した事があったと記述している。それはバラクオバマさんが米大統領の時の欧州通貨危機にオバマ大統領の激しい圧力発言に、政治的な決まりでどうしても自分がオバマさんの主張に従うことは出来ないとのやり取りで、対外的にも明らかにされなかった事も伝えている。

 

 アンゲラさんの人柄は、指導者でありながら決して拍手喝采の手柄を求めない、誠実な人柄で、しかし首尾一貫してまるで欧州のしっかりした勤勉な執事の様な役割を果たし、その主張は二つの価値判断を跨ぐ曖昧さがあるものの、今改めてその成果をみると、度重なる危機を乗り越える役割を果たした事は、だれの眼にも明確であると言わざるを得ない。

 

 東西ドイツの統合後のドイツの2008年経済危機、それに続く欧州の経済危機、2015年の移民問題、パンデミック、ロシアのウクライナの一部統合、それにイギリスの欧州離脱Brexit、米ドナルド・トランプ大統領と欧州との確執など、この多くの危機を、冷静な眼で判断し、行動して大きな誤りを避けられた結果、今の欧州は世界の脱炭素化の大きなうねりの中心となって活発な経済活動をリードしている。

 

 発言だけが先行し、その実績が伴わない政治リーダーは世界でも多く、我が国もその例外ではない。実務に徹しながらも欧州の経済圏を牽引して来たアンゲラさんの存在が無くなった後の欧州を辛抱強く説得し、牽引してゆくリーダーが現れるであろうか?

 

 そんな欧州の心配もあるが、我が国には、明治維新を果たした多くのリーダーがかっては存在して筈だと想像するが、今の政治家は果たしてアンゲラ・メルケルさんのレベルのリーダーは生まれてこないのであろうか?若い世代の改革者の出現を期待したい。

 

参考:The New York Times、Sep 25-26、朝日新聞2012.10.3朝刊

 

 

(IRuniverse)