日本、米国、豪州、インドの4カ国からなる、比較的新たな国際的枠組み「QUAD(クアッド、Quadrilateral Security Dialogue日米豪印戦略対話)」。9月24日、実際の対面としては初となるQUAD首脳会議が米国ワシントンのホワイトハウスにて開催されたが、世間の大きな関心は、対中国という視点でQUADがどういったアプローチを取るのか、あるいは各国と中国との今後の関係、国際的な力関係の行方などにあろう。当記事では、QUADでの重要鉱物戦略に関して、主に豪州現地報道を参考に、情報を整理する。

 

 まず、全体としては、今回の会談により、4カ国は主要製品と重要鉱物のサプライチェーンを描き、プロジェクトの迅速な推進とオフテイク契約の確実性を高めるような新たな規制を策定することに正式に合意した、と伝えられている。

 

 また、9月25日のロイター通信などが伝えているところによれば、今回、各国の首脳が(記者団らに対し)公に中国の存在に言及することはなかったとのこと。ただし、中国が力を誇示しようとしている地域において規則に基づいた行動を遵守することの重要性は、繰り返し主張されたということだ。

 

 なお、日本、米国、インドの3カ国は、重要鉱物の供給において豪州が果たしている役割に感謝の意を表したと報じられている。豪州は、例えばレアアースに関しては、中国に次ぐ供給国であり、また、ニッケル、銅、コバルトなど、EVバッテリーに欠かせない鉱物の主要な供給国でもあり、鉱物業界において大きな存在感を示している。

 

 シドニー・モーニング・ヘラルド紙は、9月25日付で、「レアアースをめぐる中国の支配力を弱めるため、QUAD首脳陣が一致団結」とした記事を掲載。おそらく会議直前に書かれた記事と思われるが、ここには、豪州は、現代技術に不可欠な鉱物の供給を中国が過度にコントロールしないようにするため、米国、インド、日本との協力関係を強化することを、今回のQUAD首脳会談の重要な目標の一つとしているとある。

 

 ちなみに、同記事には、戦略的ライバル国との貿易戦争の一環として、レアアース大国である中国は、重要な消費者向け技術や防衛技術へのアクセスを遮断するのではないかと警戒されている、との記述も見られた。

 

 一方、9月26日の豪ファイナンシャル・レヴュー紙は、QUADの重要鉱物戦略が中国に追いつくのは容易いことではない、という論調の記事を掲載。豪州企業らの様々な声を掲載している。

 

 例えば、豪Northern Minerals社のCEO Mark Tory氏は、QUADについて、この待望の戦略は正しい方向への一歩だとしながらも、自分たち(豪州あるいはQUAD各国?)はすでに中国に大きく遅れを取っているとの認識を示し、その遅れを取り戻すには、つまり、中国に支配されているサプライチェーンを多様化するには何年もかかるであろうと警告を発している。

 

 これに対し、豪レアアース企業Lynas Rare Earths社のCEO、 Amanda Lacaze氏は、QUADの戦略は、自社が直面している障壁に対処するのに役立つと述べ、QUADの姿勢を歓迎するコメントを寄せている。また、Lynasほどの規模ではないが、同じく豪州レアアース企業のArafura Resources社は、QUAD戦略の重要性を称えながらも、豪州にとっては独自の生産施設の設立が重要であるとの見解を強調している。

 

 豪州の最新の動きとしては、9月28日、豪州政府は、重要鉱物資源の開発プロジェクトを支援するために、20億豪ドルの融資制度を設立することを発表した。

 

 スコット・モリソン首相はこの声明の中で、重要鉱物を、将来のエネルギー経済の基盤として政府にとっても戦略的な分野であると位置づけ、「重要鉱物資源市場は、その商業的な側面から、確立させるのが難しい領域です。豪州の資源生産者が、自由で開かれたインド太平洋の我々のサプライチェーンの中で他の企業と連携できるよう、その存在を確立させられるようにしたいと考えています」とコメントしている。

 

 

(A.Crnokrak)