カーボンゼロ時代のアルミニウム生産 #24 アルミ缶・ボトル缶のリサイクル、そして食品表示」からの続き

 

 新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、食品表示法に基づく食品表示基準の規定を段階的に運用することが2020年4月、消費者庁より通知されている。一般消費者の需要に即した食品の生産体制を確保する観点から、農林水産省及び厚生労働省と連名で発表したものである。

 

 

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 その中でも指導は引き続き行われており、精米年月日の誤表示や欠落、原産地や原産国の誤表示・欠落などは省庁の基準によって指導実施はあるものの、件数は減少している。背景には、実際のラベルの張り替えなどを行わずとも、ウェブサイトなどの告知へ代替えすることが許可された、今回の通達が影響しているものと思われ、下記のような対応で可能となっている。

 

 「食品表示基準に基づき容器包装に表記された原材料等、原料原産地又は栄養成分の量などの表示事項と実際に使用されている原材料等、その原料原産地又は当該原材料等から得られる栄養成分の量などの表示事項に そごがある場合であっても、一般消費者に対して、店舗等内の告知、社告、ウェブサイトの掲示等により当該食品の適正な原材料等その他の情報が適時適切に伝達されている場合にあっては、当分の間、取締りを行わなくても差し支えないこととします」

 

 アフターコロナ時代には、このような措置は解除されることとなる。そのため、これまで業務用中心で対策をしてこなかった企業や、関連性をほぼ持たなかった業種や商品群においても、消費構造が大幅に変化している中で、これからはしっかりとした準備と対策を打ち出す必要が出てくるだろう。国際的なカーボンゼロ時代の高まりの中で、リサイクルの啓蒙なども各社の責任として求められるであろう。

 

 また、BCP(Business Continuity Plan)対策についても、今後はより必要とされる企業が多いとされている。BCPは、BCM(Business Continuity Management)の一部であり、事業継続マネジメントのことである。この運用には計画、実行、確認、そして改善のプロセスがあるが、運用全体がBCMに当たり、BCPは最初の“計画”を指す。コロナ対策もさることながら、昨今の大雨などの自然災害に伴い、消費者庁の食品表示ラベルにおいても、製造所の包材の使用許可などの措置がある。緊急事態が発生した際に、事業の復旧や継続が行われる計画を策定し、速やかに申請を行うことがキーとなるだろう。

 

 マニュアルの作成やあらゆる緊急事態を想定した訓練が必要になるとはわかっていてもリソースが限られた中ではなかなか難しい事情もあろう。大企業の60%がBCP対策を実施していると言われる中で、中小企業は30%程度と言われている。しかしながら自然災害多発などの目に見える影響下で、国際的にカーボンゼロを目指す方向性の中で、これまでのマニュアルの更新も行う必要が出てくるであろう。

 

 そして、第二の動きとしては、原料高に対する企業の商品戦略の動向がある。グリーンアルミへの変換を打ち出し、100%クリーンエネルギーを掲げる大企業の試みなどは前回触れた。

 

→(関連記事)カーボンゼロ時代のアルミニウム生産 グリーンアルミ、多国籍企業の取り組みVol.10”

 

 このような企業でも原料の高騰が非常に速いスピードで進行しているため、対応を迫られている。例えばコーヒー飲料を製造する際に必要なコーヒー豆、そして加工油脂であるが、今年に入り特に値上げが加速している。

 

 2021年3月、世界的な油脂原料価格の一斉高騰を受け、製油メーカー大手3社から家庭用・業務用油脂の価格改定が発表された。昭和産業は3月、日清オイリオグループとJ-オイルミルズが4月、理研農産化工も価格を改定、日清オイリオグループが20円/kg以上、斗缶で300円以上、それ以外の企業は30円/kg以上、斗缶で500円以上の値上げとなった。食用加工油脂メーカーもコスト増などから、ミヨシ油脂、カネカが2月値上げを発表し、油脂関連業界は、コロナ禍における価格交渉の困難さから大きな影響を受けている(食品産業新聞社2021年2月5日)。

 

 

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コンビニの売り場のペットボトルコーヒー

 

 

 ペットボトルコーヒー、そしてコーヒーラテなどのコーヒー缶飲料は、クラフト系、甘くないラテなど、数々の新商品が2020年より増えた。そして、これまで缶コーヒーを飲用しなかった若者層や女性層を、このコロナ渦にあって、その利便性と新鮮さ、手軽さから新しい消費者を取り込んでいるのである。この開発の背景には、原料のこれまでにない高騰などの影響が欠かせない要素と言えよう。

 

 

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出典:アサヒ飲料HP

 

 

→“カーボンゼロ時代のアルミニウム生産 #26”へ続く

 

出典:

 ・https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/assets/representation_cms214_210716_02.pdf

 ・https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/assets/food_labeling_cms204_201023_01.pdf

 

 

A L U C O

 流通業界に身を置くこと20年、中東、ヨーロッパの大学院に留学した経験から、エネルギー産業への関心が高い。趣味はスキューバダイビング、自然観察、ワイン(ソムリエ)。