バラク・オバマ元大統領に続いて、ナンシー・ペロシ下院議長がパーティー開催でやり玉にあがった。米国では来年、中間選挙が行われる。下院議員は2年ごとに有権者の洗礼を受けるので、今は選挙資金集めに必死だ。下院議員歴34年。民主党の大ベテラン、ペロシ議長であっても例外ではない。地元、サンフランシスコ周辺で資金集めに余念がない。

 

 やり玉にあがったのは22日に開かれたパーティーだ。民主党の選挙組織「Democratic Congressional Campaign Committee」(DCCC)の主催で、サンフランシスコから北に約90キロ、ワインの産地として世界的に有名なナパ・バレーに支持者が集まった。当然、この日の主役はペロシ議長だ。

 

 ソーシャルメディアにアップされた映像は、屋外に用意されたテーブルにマスクをしていない支持者が、肩と肩が触れる間隔で座る様子だった。支持者は爽やかな夏空の元で高級な食事とワインを楽しんだ。

 

 この映像に共和党や保守系メディアが飛びついた。

 

 米国では9月から学校の新学期を迎えるが、それを前に学校などでのマスクの着用をめぐって国論が二分している。ペロシ議長をはじめ民主党は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためマスク着用を強く求めている。マスクを着用していない民主党のパーティーの映像をたてに、保守派は「民主党の矛盾」を厳しく批判した。

 

 ペロシ議長の政敵、共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務は、自身のツイッターでパーティーの様子を示し、「全くの偽善だ」とペロシ議長を非難した。

 

 保守系メディアはパーティーのチケットの価格も「偽善」の例としてあげた。チケット価格は参加者の立場によって違い、100ドル(約1万1000円)から29000ドル(約319万円)と幅がある。保守系メディアは、庶民の味方を掲げる民主党がこんな高額な資金集めパーティーをしている、という理屈で批判の標的にした。

 

 米国では、このぐらいの選挙資金パーティーは当たり前のことで、大統領選になればさらに高額になる。それほど驚くほどの額ではなくても、共和党にとっては民主党をたたく格好の材料だ。

 

 さらにアフガニスタン情勢もペロシ議長に追い打ちをかけた。

 

 タリバンがアフガニスタンを支配したことで首都カブールの空港には国外に脱出しようとする人たちが押しかけ、無秩序状態に陥っている。パーティーが開かれた日、米NBCニュースは、空港に行く途中でタリバンに襲われた米国大使館の現地人スタッフの悲痛な声を特ダネで伝え、国内に衝撃を与えた。

 

 「タリバンの銃弾を受けて死んだ方がましだ」

 

 現地人スタッフは外交公電を通じて国務省にメッセージを送り、米国政府による国外退去のやり方を非難していた。

 

 大統領が職務を遂行できなくなった場合、副大統領が大統領となり引き継ぐが、その副大統領も職務を遂行できなければ下院議長が大統領となる。そういう立場の議長が、こうしたアフガニスタン情勢の最中に、優雅なパーティーを開いていていいのか、というところまでパーティーへの批判は広がった。

 

 アフガニスタン情勢をめぐり、意味不明の笑顔を見せて批判を浴びたのはカマラ・ハリス副大統領だ。

 

 ハリス副大統領は東南アジアを訪問するため20日深夜にワシントンを飛び立った。東南アジアと米国のパートナーシップの強化を図ることが目的だ。

 

 ハリス副大統領は出発直前に記者団の前に姿を見せたが、アフガニスタン情勢が緊迫化している中で、笑顔での登場だった。しかも、アフガニスタンについての記者の質問にはまともに答えず、記者の質問をさえぎった。

 

 この様子はソーシャルメディアでも流れ、「深夜のトークショーの登場シーンみたいだ」などとの批判の声があがった。

 

 ハリス副大統領の外遊は6月の中米訪問以来、2回目だ。中米訪問ではメキシコにも立ち寄ったが、米国への亡命希望者が押しかけて緊迫が続く米国との国境地帯を視察することはしなかった。このため、保守派から「何しに行ったのか」という手厳しい批判を受けた。

 

 史上初の女性副大統領として大きな注目を集めたものの、これまでのところ、これといった手柄はない、といわれる。期待が高かっただけに、ハリス副大統領を見つめる国民の視線は厳しくなる。

 

 19日に公表されたラスムセンの世論調査では、ハリス副大統領は大統領職にふさわしいと答えたのは43%で、前回4月の調査より6ポイント下落した。

 

 アフガニスタンをめぐり米国への風当たりは世界的に強まるばかりだが、バイデン大統領を支える2人の女性の仕事ぶりが気になるところだ。

 

 

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Taro Yanaka

 街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

 専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

 趣味は世界を車で走ること。

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