資源大手のBHPはこのほど、好調な業績を背景にポートフォリオの見直しと組織全体の再編にかかわる新たなプランを公表した。同社が発表した再編案は以下の通りだ。(写真はイメージ。BHPの公式HPから引用)

 

 BHPは、再編の柱として経済成長と脱炭素化を掲げた。そのため、世界が求めるコモディティを生産することでさらなる価値創出に向けて全社一丸となり、取り組む姿勢を示した。

 

 具体的な取り組みは以下の通りだ。カナダのジャンセンステージ1プロジェクトに対して57億米ドルを投資する。これはカリ盆地における新しい高利益事業であり、BHPの新しい未来に向けての成長のチャンスも開く。

 

 また、BHPの石油事業を豪エネルギー企業のウッドサイドとの合併を求める契約を通して、世界上位10社に含まれる独立エネルギー会社を立ち上げる。BHPの株主が合弁会社の株式48%を所有する。

 

 こうした戦略について、BHPのマイク・ヘンリーCEO(最高経営責任者)は「しっかりとした経営および財務パフォーマンスを基盤に、BHPは引き続き株主に対して魅力的なリターンを届ける。BHPは長期的な価値創造を可能とする、ポートフォリオと能力を通して未来に向けて積極的にポジショニングを行なっている。当社は世界が必要とするコモディティを持続可能な方法で提供する」とコメントした。

 

 また、将来に向けたコモディティ分野でさらに成長する機会を確保するという戦略に合わせて、BHPは魅力的な地域における非常に有望なニッケル盆地にアクセスするため、カナダのノロントリソースを取得するよう、正式なオファーを提出した。ノロントの役員会は満場一致で、BHPのオファーを受け入れるよう株主に推奨したとしている。

 

 ヘンリーCEOは「BHPの商品は世界の経済成長、生活水準の向上そしてエネルギー移行のために必要不可欠だ。世界は電化、再生可能電力および電気自動車(EV)のためにより多くの銅とニッケルを必要とし、インフラのための鋼鉄を生産するために鉄鉱石と高品質の原料炭を必要としている。これには、脱炭素化に必要な分および持続可能な食品製造に必要なカリも含まれる」と指摘。その上で、BHPが世界のニーズを満たし、株主、従業員そしてビジネスパートナーだけでなく、事業を展開する地域社会や政府に対しても持続可能な方法で価値をつくり続ける」と付け加えた。

 

 カナダのジャンセンステージ1関連では、同プロジェクトに57億米ドルの投資をすることを承認した。この計画は年間435万トンのカリを生産するもので、当初の生産は2027年をターゲットとし、2年かけてその生産を増加するという。カリは主に肥料に使用され、カリウムを多く含む塩であり、植物の成長にとって必要不可欠な栄養だ。ジャンセンステージ1は、低コストであり、世界で最も持続可能なカリ鉱山の一つとなることが期待され、低カーボンフットプリント、そして水の消費が少ないものになるとしている。

 

 ジャンセンステージ1建設のピーク時には3,500人の雇用を創出し、継続的運営には600人を雇用、そして地元および先住民のための機会を提供する。ジャンセンの従業員は当初から男女比のバランスをとり、チームの20%が先住民となる。BHPは現場周辺の6つの先住民コミュニティーと「(事業)機会契約」を締結したが、これはカリ業界で初めてとなるそうだ。

 

 他方、BHPは世界的な独立エネルギー会社を立ち上げるため、石油資産をウッドサイドと合併することを提案済みで、このポートフォリオには北西大陸棚からメキシコ湾に渡る、世界一流の石油ガス地域が含まれている。

 

 ヘンリーCEOは「BHPの石油事業をウッドサイドと合併することにより、世界上位10社に含まれる独立エネルギー会社がつくられ、それによりシナジーが解き放たれ、BHPの株主の価値が向上し、オプションが増える。一体となったビジネスは、よりリジエンスを持ち、エネルギー移行を通して継続的に価値を提供する」と強調する。

 

 世界で最も優れた石油およびガス盆地の一部における、一連のブラウンフィールドおよび未開発地域のプロジェクトからの高リターンにより、合併した新会社は成長の機会を享受する。これには、Shenzi Northプロジェクトを開発し、トリオンプロジェクトを継続的に進めるためにBHPが最近8億米ドル以上コミットしたことも含まれるという。この合併設立には規制およびその他の承認を得る必要があるが、2022年第2四半期に完了する予定だ。

 

 BHPは現在、両社(豪州のBHPグループリミテッド及び英国のBHPグループ)ともに上場済みで、2つの親会社を持つ、二元上場会社である。BHPはBHP Ltdのもとで単一の企業構造を採用し、豪州証券取引所(ASX)でプライマリー上場することを提案している。統一化された企業構造のもとで、BHP Ltdの株式は豪州、ロンドン、ヨハネスブルグの各証券取引所で上場され、ニューヨーク証券取引所では米国預託証券(ADR)プログラム扱いとなる。

 

 今後、役員会による最終承認を経た後、BHPの株主は2022年の第一半期に予定されている株主総会で統一化にかかわる投票実施が予定されている。


 

在原次郎

Global Commodity Watcher