米国内の製油所における精製能力が減少している。新型コロナウイルスの感染拡大にともなうガソリンやディーゼルの需要減退に加え、世界規模で進む脱炭素化への転換があることが数字上からも判明している。米エネルギー情報局(EIA)の資料に基づく、米国の製油所事情について取り上げる。(写真はイメージ。Yahoo画像から引用)

 

 EIAが今年6月末に公表したウィークリー・レポートによると、米製油所おける精製処理能力は85万BCD(4.5%)減少して1,813万BCDとなった(過去最高は2019 年の1,898万BCD)。EIAは減少した背景について、コロナ禍でガソリンなどの自動車燃料に対する需要が減少し、販売価格の低下で精製業者が製油所の稼働を停止したことにあると分析。世界的な潮流である脱炭素化への転換の動きも拍車をかけたと付け加えた。

 

 今年1月1日現在、運転を停止している(アイドル状態)米製油所の数は129カ所だ。1年前は135カ所だったので、差し引き6カ所の停止となる。停止した製油所の内訳は、Marathon Petroleumが3カ所、Royal Dutch Shellと独立系のHolltFrontierがそれぞれ1カ所ずつとなった。(㊟ Philadelphia Energy Solutiionsが運営していた製油所は後に閉鎖されたものの、1月1日時点で稼働中だったため、カウント対象外となった)。

 

 他方、2020 年 1 月から 2021 年 6 月までに売買された製油所は3 製油所だ。昨年 2 月に PBF EnergyがShellからカリフォル ニア州の Martinez製油所(処理能力は15.6万BCD)を買収した。昨年6 月にはHilcorp North Slopeが英BPからアラスカ州の Prudhoe Bay製油所(同6,500BCD)を買収。また、21年1月1日に Hartree Partners がTarga resourcesからChannelviewコンデンセートスプリッター(同3.5万BCD)を買収済みだ。

 

 2020 年の原油精製量は平均1,420万BPDで、過去10年間で最低となった。また、20年の製油所における平均稼働率は79%と低く、1985年以来の最低レベルとなった。一方。米国の2020年の石炭火力生産量は5.35億ショートトン(st)で、19年の7.06億stに比べて24%減少し、1965年以降で最低となった。2020年に世界の石炭需要量が減少し、米国で発電向けの供給量が減少したことが影響した。

 

 こうした状況下、石油メジャーのExxonMobilは製油所の近代化を急いでいる。Exxonはルイジアナ州で展開するBaton Rouge製油所(処理能力は52万BPD)の拡張・近代化プロジェクトを最終投資決定(FID)した。総事業費は2億4,000万ドルを見込む。精製能力の増強を図るとともに、揮発性有機化合物(VOC)の排出削減に向けた設備工事を計画する。今年後半にも着工する見通しだ。

 

 一方、再生可能燃料の生産で設備を転換しようとする動きもある。PBF Energy は、ルイジアナ州ニューオーリンズ郊外のChalmette 製油所(処理能力は18.5万BPD)で休止中の水素化分解装置を改造して再生可能ディーゼルの生産を計画することを発表済みだ。ルイジアナ州政府はプロジェクトを推進するため、ExxonとPBFの各プロジェクトを税制面で優遇するという。

 

 米国エネルギー情報局(EIA)は7月末、再生可能ディーゼルの生産能力が、昨年末の6億ガロン/年(3.8万BPD)に対し、2024年には51億ガロン/年(33万BPD)に増加すると予測する。再生可能ディーゼルは、バイオリファイナリー以外に製油所の精製設備で石油留分と混合処理して生産することが可能であるため、米国では製油所の設備改造計画が注目されている。

  

 

在原次郎

Global Commodity Watcher