オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は8月17日、液化天然ガス(LNG)を輸出するエネルギー業者が国内市場への供給を拡大しなければ、東海岸を中心とする豪州南部の州が2022年にもガス不足に陥る可能性があると警告した。(写真はYahoo画像から引用)

 

 豪州当局はこれまで、LNG輸入ターミナルが整備されること見越して、ガス・ガス・電力市場運営機関であるオーストラリア・エネルギー市場オペレーター(AEMO)は今年3月、2026年まではガス不足が回避されると表明していた。

 

 けれども、ACCCの見立てでは2023年までにLNG輸入ターミナルの運用が見込めないとし、ACCCのロッド・シムズ委員長もこのほど、豪州国内におけるガス供給が不安定になると懸念を示した。

 

 豪州でガス供給不足に対する不安はいまに始まったことではない。2014年9月、豪州労働組合(AWU)は「天然ガスの一大生産国である豪州で国内にガス供給できないことは不条理であり、自国で生産されたガスの一定量を国内向けに供給すべき」とするキャンペーン「Reserve Our Gas」を大々的に展開した。

 

 こうした事態を招く理由として、AWUはコンサルティング会社であるBISシュラプネルが公表したレポートをもとに、インドネシアやイスラエルなど他の天然ガス輸出国と異なり、豪州には国内で産出した天然ガスの一定量を国内向けに供給しなければならないとする法律が存在しない点を挙げた。

 

 他方、米国やカナダでは天然ガスを「公共の利益」と見なしているほか、カタール、マレーシア、アルジェリア、ロシアなどは国営企業が運営しているため、国内価格を輸出価格より低く設定することで、価格優位性を確保している。

 

 AWUは、豪州の場合、すべて民間企業任せで、天然ガスやLNG輸出が企業裁量に委ねられていると主張。これを速やかに是正すべきであると訴えた。

 

 こうした経緯もあり、豪州政府は今年1月、LNG輸出業者3社が契約していないガスを輸出前に国内向けに提供するとの契約で基本合意に至った。しかし、業者の対応は不十分とされた。そのため、シムズ委員長は豪州南部の州を中心にガス供給が不安定になる可能性が大とし、LNG輸出業者に国内向けに供給するよう促したとされる。


 

在原次郎

Global Commodity Watcher