金融アドバイザーの川上敦氏は8月14日、世界経済の動向分析・見通しにかかわるオンライン・セミナーを開催した。このなか、最近の動きとして「海外勢が日本の不動産市場に注目している」と言及した上で「米中の株式市場がピークアウト後、投資資金が日本の不動産市場に流入してくるのではないか」との見解を示した。(画像はイメージ)

 

 8月6日時点のデータをもとに、川上氏は「S&Pグローバル不動産インデックス(ドル建て)がコロナ禍が本格化した2020年2月14日の222ポイントを上抜けてきた」と指摘。特に米国の不動産市場が好調とした。その上で、米国における住宅価格は今年5月、前年比で18%を超も増えているとし「そろそろピークに差し掛かる」と付け加えた。

 

 他方、アジア地域の不動産価格はでは今年5月末がピークであるとした。その理由として川上氏は、香港市場での不動産価格の下落が主因であるとした。

 

 こうした状況下、海外投資家らは現在、日本の不動産市場に関心を寄せているという。J-REIT不動産価格指数が堅調に推移しているため「外資系は物件探しに動いている」(川上氏)という。

 

 なぜ、日本の不動産市場が注目されるのかーこれについて、川上氏は世界経済全体を俯瞰した上で、米国や中国経済が先行き懸念を上げた。米国景気は悪くないが、労働環境があまりよくないとしている。

 

 他方、中国経済も景況感が急回復から横ばいとなるなど、製造業を中心に懸念が広がっていると説明。貿易収支は黒字ペースにあるものの、2020年をやや下回る数字となり、対前年比でニュートラルとなっていないため「投資動向も頭打ち状態と判断すべき」(川上氏)。また、中国における民間部門でクレジット問題が再燃するリスクについても言及した。

 

 外国為替市場について、川上氏は円を除く他通貨は中期トレンドとして緩やかなドル安傾向になるとの見方を示した。また、米金融緩和の効力は以前より大きく影響しないものの、株価の変動要因になりうると強調。直近のS&P500市場では、出来高が徐々に沈静化している。この状況を踏まえ、同氏はバブルが弾けた1989年12月、「出来高が細る一方、売買代金は増えた。いまの状況は当時と似ている」とし、株式マーケット動向に警戒が必要との認識を示した。

 

 高値水準が続く米国株式市場だが、中国経済のピーク感もあり、その後の投資先として注目されているのが、前述したように、日本の不動産市場だ。川上氏によると、実際、北海道のニセコに続き、青森県の十和田湖近くの八甲田山でリゾート開発計画が浮上しているようで、欧米勢を中心とする外資が土地や施設の取得に動いているという。中国の富裕層も投資に関心を持っているとされる。

 

 国内不動産市場の今後について、川上氏は次のように総括した。「海外勢はM&A(企業の合併・買収)、TOB(株式公開買い付け)を仕掛けるなど、経営陣に対し株主利益を出すよう要求してくるだろう」。


 

(IRuniverse NA)