千代田化工建設、三菱商事、三井物産、日本郵船は8月10日、4社が共同で設立した次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合を通じて、ENEOSが推進する実証事業に向けてブルネイで製造する水素をメチルシクロヘキサン(MCH)として供給する契約を同社と締結したことを明らかにした。(写真はブルネイに設置した水素化プラント。ニュースリリースから引用)

 

 二酸化炭素(CO2)フリーのクリーンなエネルギーとなり得る水素は、脱炭素社会構築の切り札と目されるものの、水素を多く使用する需要地とその供給地をグローバルかつ安定的に結ぶ大規模な長距離輸送・長期間貯蔵が技術的な課題となっている。 

 

 トルエンと水素から生成されるMCHは、常温・常圧下では液体の状態で、貯蔵や輸送については製油所の設備やケミカルタンカーを含む石油及び石油化学品向けの既存のインフラを活用することが可能であり、しかも必要な時に水素を取り出すことができる有機化学品だ。次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合は、技術的課題解決手段の1つとして、MCHを利用した水素の利用商業化に向けた実証事業に取り組んできた。

 

 同組合は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けて、ブルネイで製造したMCHを日本に初めて国際間輸送し、水素を安定的に取り出す実証を2020年に実施、完了した。 このほど、ENEOSがCROS(石油供給構造高度化事業コンソーシアム)の助成を受けて実施する同社製油所向けの技術実証支援事業においても、組合がブルネイで製造する水素をMCHとしてケミカルタンカーなどで輸送し、供給する役割を担うことになったという。

 

 現在、国内の工業用水素利用の過半を占めるとされる石油精製の脱硫工程では、CO2の排出を伴う化石燃料由来のグレー水素が利用されている。製油所で利用するグレー水素を、MCHで輸送・貯蔵したCO2フリーの水素に置き換えることにより、CO2排出量の削減が可能であることから、ENEOSの実証事業に対する組合のMCH供給協力は、水素輸送・貯蔵手段としてのMCH活用の普及・拡大に向けた大きな一歩になると期待される。

 

 

在原次郎

Global Commodity Watcher