今年4月、大幅な資金不足を理由にWFP国連世界食糧計画(国連WFP)が南スーダンで難民や国内避難民への食料配給を削減するとの情報が伝わった。食料配給削減は70万人近くの難民や国内避難民に影響し、これまでの70%から50%の配給になるとされた。完全配給の場合、1人当たり2,100キロカロリーで、50%の場合は1,050キロカロリーになるというショッキングな内容だった。(WFP/Marco Frattini, Child eating PlumpySup to treat moderate acute malnutrition=MAM)

 

 南スーダンの食料不安は驚くほど高くなっている。最新の総合的食料安全保障レベル分類 (IPC) 評価では、7月の作物の収穫量が減る時期のピークには724万人が深刻な急性飢餓に直面し、140万人の子どもが急性栄養不良に陥ると、国連WFPは警告している。 

 

 他方、 国連食糧農業機関(FAO)や国連WFPは今年4月、コンゴ民主共和国(DRC)においても食料安全保障の状況は依然として厳しいと警告。IPC分析によると、2,730万人、3人に1人の割合で、約700万人が緊急レベルの急性飢餓(IPC 4)に苦しんでいると推定されるとした。これにより、DRCは緊急に食料安全保障の支援を必要とする人の数が世界で最も多い国となった。

 

 飢餓の主な原因は紛争であり、この影響を受けた東部のイトゥリ州、北・南キブ州、タンガニーカ州の広い範囲と、最近では紛争の舞台となった中部のカサイ州が最も甚大な被害を受けているという。また、DRC経済の落ち込みや新型コロナウィルスによる社会経済的な影響も、この危機をさらに悪化させる要因となっている。 

 

 最も被害を受けているのは、主に避難民、難民、帰還者、受け入れ先の家族、自然災害(洪水、地滑りなど)の影響を受けた人たち、そして女性が家長を務める世帯だ。さらに、都市部や都市周辺部に住む最貧困層や、購買力が低く、市場を通じて食料を入手できない内陸部に住む人たちも加わる。被害の影響は社会的弱者たちに集中している。

 

 このほか、食料不足が深刻さを増すのはケニアも同様だ。国連WFPは4月、ケニアの43万5,000人以上の難民が差し迫った飢餓に直面していると警告。北西部のカロベイ地区に住む4万人の難民が最初の被害を受ける危険性があると指摘した。

 

 待ったなしの支援が求められるなか、国連WFPは7月末、最新の報告書を公表した。紛争や国境封鎖などによって飢饉に瀕する人たちへの支援が中断されている国があるとした上で「急速に拡大する世界的な急性食料不安に対する支援が妨げられている」と警告。国連WFPとFAOは、すでに4,100万人が緊急的な食料と生計支援を受けなければ、飢饉に陥る危険性があると危機感を示した。

 

「食料危機に関するグローバル報告書」によると、2020年は世界55カ国で1億5,500万人が「危機」(Crisis)以上のレベル(IPC〈 (総合的食料安全保障レベル分類〉/CHフェーズ3以上)の急性食料不安に直面し、2019年から2,000万人以上増加し、この傾向は今年、さらに悪化する見通しと、悲観的な見方を示した。

 

 報告書では、2021年8月から11月までの期間、紛争、異常気象、経済ショック(新型コロナウィルスの経済的影響に関連)が、深刻な食料不安の主な要因であり続ける可能性が高いと強調。いくつかの地域では、国境を越えた脅威も悪化要因となっている。特に「アフリカの角」でのサバクトビバッタ(Desert locust)の発生や、南部アフリカでのトノサマバッタのアフリカ亜種(African migratory locust)の発生には引き続き監視と警戒が必要との見方を示した。

 

 食料不安に晒されているのは無論、アフリカ諸国の人たちだけではない。内戦が続く中東シリア、イエメン、中米ホンジュラス、アジアのミャンマーなど多くの国々・地域に及んでいる。国連(UN)の報告書によると、2020年は世界人口の10人に1人に当たる最大8億1,100万人が飢餓に苦しんだと推定される。30年までに飢餓をゼロにするという目標を達成するために、気の遠くなるような現状だが、難題克服のため、国際社会は英知をもって取り組まなければならない。国連WFPによると、緊急の資金援助が求められるとしている。

 

 主要な国際機関は「2021年は国連食料システムサミット、栄養サミット、第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催され、食料システムの変革を通じて、食糧安全保障と栄養を推進するためのまたとない機会だ」としているが、飢餓問題の解決に時間的な猶予は残されていない。

 

 

在原次郎

Global Commodity Watcher