世界で猛威をふるう異常気象や、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で農業分野での被害が深刻さを増している。これに加え、紛争や国境封鎖などにより飢饉に瀕する人たちへの支援に支障を来たす事態を招いている。 国連食糧農業機関(FAO)やWFP国連世界食糧計画(国連WFP)などの報告書によると、とりわけ、アフリカ諸国で食料支援が危機的な状況にあるという。(Photo: WFP/Krystyna Kovalenko, a child living in the Sihanamaro Commune, one of epicentres of food security crisis in the Grand Sud of Madagascar)

 

 国連WFPの報告書では、エチオピアとマダガスカルが「最大の警戒」(highest alert)を必要とする飢餓のホットスポットに新たに追加された。エチオピアでは、ティグライ州の紛争が続いていることを受け、深刻な食料危機に直面している。9月までに40万1,000人が壊滅的な状況に陥ると予想され、これは2011年のソマリアの飢饉以来、1つの国で最も多い数となるという。

 

 こうした状況下、国連WFPは7月半ば、900トンの食料と緊急物資(トラック50台分)をティグライ州の州都メケレに届けた。しかし、この地域の膨大な人道的ニーズに応えるためには毎日、トラック100台分が稼働しなければならない。同州では約400万人が緊急食料支援(毎週1万トン以上の食料と15万リットルの燃料輸送)を必要としている。

 

 一方、マダガスカル南部では、過去40年間で最悪の干ばつに加え、食料価格の高騰、砂嵐、主食作物に影響を与える害虫発生などにより、年末までに2万8,000人が飢饉のような状態に陥ると予想されている。

 

 今年5月現在、マダガスカル南部では、日を追うごとに飢餓が深刻化し、多くの命が危険にさらされている状況だ。約114万人が急性食料不安に直面し、そのうち約1万4,000人が「カタストロフィー」(フェーズ5:総合的食料安全保障段階分類=IPC=の5段階のうち最も高いレベル)に陥っているそうだ。

 

 2016年にIPCの手法が導入されて以来、マダガスカルでフェーズ5の人たちが記録されたのは初めてのことだ。緊急の対策を講じない限り、2021年10月から始まる次の「リーンシーズン」(次の収穫を前に食料が不足する時期)に「カタストロフィー」カテゴリーの人たちの数が倍増すると危惧されている。

 

 干ばつ、砂嵐、動植物の病害虫、新型コロナウィルスの影響により、最も被害の大きかったアンボアサリ・アトサイモ地区(Amboasary Atsimo district)では、人口の4分の3が悲惨な状況に陥り、世界の急性栄養不良率が27%という驚くべき数値となっている。

 

 マダガスカルにおける過去40年間で最悪の干ばつは、3年連続で発生しており、収穫物は全滅し、食料へのアクセスが妨げられている。干ばつの影響のほかにも長年にわたる森林伐採と、それにともなう侵食(現在は気候変動によってさらに悪化)が環境を荒廃させ、これまで経験したことのないような砂嵐の発生で広大な耕作地が荒地と化してしまったという。 

 

 2019/20年の農業シーズンは食料生産量が激減した。2020/2021年も降雨量が少なく、5年連続でマダガスカル島の半乾燥地帯である南部で平均以下の降雨が続いたことで、状況はさらに悪化している。2021年のコメ、トウモロコシ、キャッサバ、豆類などの収穫量は5年平均の半分以下になると予想される。21年10月から長期にわたる深刻な「リーンシーズン」が到来するため、待ったなしの支援が求められている。

 

 国連WFPは今年4月22日、モザンビークのカーボ・デルガドで暴力行為により何千人もの人たちが家を追われ、危機的状況にあると警告した。当時、パルマでの襲撃により、5万人が被害を受けたそうだ。多くの人たちが、海をボートで渡り、危険に晒されながらパルマからペンバへと逃れたという。パルマやキトゥンダでは数千人が未だに避難できない状況が続く。

 

 飢餓は依然として深刻で、特に子どもたちが最も深刻な影響を受け、栄養不良が増加している。国際連合国際児童緊急基金(UNICEF)と国連WFPによる最近の調査では、5歳未満の避難民の子どもの約21%、ホストコミュニティの子どもの18%が低体重であることが判明した。同時に、生涯にわたって影響を及ぼす慢性的な栄養不良(または「発育阻害」)の割合は、避難民の子どもでは50%、ホストコミュニティの子どもでは41%という驚くべき結果となった。

 

 モザンビーク北部では、紛争による飢餓が続いており、現在95万人以上が深刻な飢餓に晒されている。国連WFPはモザンビーク北部での対応を拡大しており、カーボ・デルガド州、ナンプラ州、ニアッサ州、ザンベジア州で75万人の国内避難民や地域の脆弱な人々を支援する計画を実行している。

 

 次回は、南スーダン、コンゴ民主共和国(DRC)、ケニアなどの状況を取り上げる。


 

在原次郎

Global Commodity Watcher