オバマ元大統領は8月4日で60歳の誕生日を迎える。大統領を退いてから、目立った場にはほとんど姿を見せず、華やかな舞台を避けてきたが、この週末、非公開ながら、盛大な誕生日パーティーを開く。ゲストは約475人、スタッフは約200人。合計700人近い規模になるといわれる。新型コロナウイルス変異種の感染拡大が深刻になる中での開催に、ライバルの共和党などから批判の声が相次いでいる。

 

 誕生日パーティーはオバマ元大統領の自宅があるマサチューセッツ州のマーサズ・ビニヤード島で開かれる。米国の政治ニュースデジタルメディア、ザ・ヒルが特ダネで報じ、2日のホワイトハウスのパサキ報道官の記者会見でも記者から質問が飛んだ。バイデン大統領はオバマ政権の副大統領であり、パサキ報道官もオバマ政権で働いていたため、答える立場にあるからだ。

 

 米疾病対策センター(CDC)によると、マーサズ・ビニヤード島があるマサチューセッツ州デュークス郡の新型コロナの感染レベルは、CDC基準で下から2番目の「Moderate」に指定されている。

 

 感染レベルは4段階で構成されており最高の「High」と、その次の「Substantial」に指定されている地域については、屋内でのマスクの着用が推奨されている。米国内の郡の約3分の2が、「High」または「Substantial」に分類されている。デュークス郡は、他の地域より感染の広がりが抑えられているということになる。

 

 マサチューセッツ州は8月3日現在、少なくとも1回はワクチンを接種した人が72.8%、接種を終えた人が64.1%で、全米でも高いレベルにある。マサチューセッツ州のデータによると、中でもデュークス郡はワクチン接種が進んでおり、接種対象者の99%が接種を終えている。

 

 新型コロナをめぐるマーサズ・ビニヤード島のこうした状況が、誕生パーティー開催の背景にある。

 

 関係者によると、パーティーは屋外で行われ、出席者やスタッフは事前に、新型コロナに感染していないかどうかのテストを受ける必要がある。到着前にワクチンを接種し終えているのかの確認をされるという。

 

 しかし、同じマサチューセッツ州で、マーサズ・ビニヤード島からも近いプロビンスタウンでは、7月4日の独立記念日の休暇シーズンに大規模な感染拡大が起きた。ここでの感染者の7割以上がワクチンを接種し終えいたことが判明し、全国的なニュースになった。プロビンスタウンでの大規模感染などを考慮し、CDCはマスク着用の基準を見直し、ワクチン接種を終えている市民も屋内ではマスクをするよう促している。

 

 ライバルの共和党などからは、批判の声が高まっている。オハイオ州選出の共和党のジム・ジョーダン下院議員は、自身のツイッターに「危険なスーパースプレッダーイベントだ。どうしてこのような、見境のないことができるのか。人々を殺す気か。もし、これがトランプ前大統領だったら、民主党員は何というのか」と書き込み、パーティーの計画を批判した。

 

 ニューヨーク州選出のニコール・マリオタキス下院議員はニューヨーク・ポスト紙の取材に対し、民主党員はダブルスタンダードだと非難した。

 

 政治家に限らず、ソーシャルメディアでもパーティー開催への疑問の声が後を絶たない。

 

 2日のホワイトハウスでの会見でパサキ報道官は、感染防止対策がいくつもあることを紹介し、パーティー開催を擁護した。

 

 パサキ報道官は「オバマ元大統領はワクチン接種の巨大な支持者だ」と持ち上げ、追及する保守系のメディア、フォックスニュースの記者に「CDCが(マスクについて)指示を出したのは屋内について、または感染の多い地域に対してだ。このイベント(オバマ元大統領の誕生日パーティー)は屋外で開催され、しかも『モデレート』地域でのことだ」と説明した。

 

 オバマ元大統領は2019年、マーサズ・ビニヤード島のエドガータウン・グレート池に面した豪邸を購入し、暮らしている。敷地面積は約11万7300平方メートルで、販売当時、不動産業界が付けた価格は約1200万ドルだった。1ドル110円で計算すると約13億2000万円となる。

 

 マーサズ・ビニヤード島はセレブの夏場のリゾート地として知られる。住宅の約56%は別荘。人口は1万7000人ほどだが、夏のバカンスシーズンだけは人口が6倍ぐらい増える。富裕層がこぞって訪れるため、本土から近い小さな島にもかかわらず空港がある。

 

 歴代の大統領も度々、訪れることで有名だが、オバマ元大統領は上院議員時代を含め、家族で頻繁に訪れていた。マーサズ・ビニヤード島好きが高じて住民になってしまったという訳だ。

 

 オバマ元大統領の誕生日パーティーには、映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏や俳優のジョージ・クルーニー氏、マルチタレントのオプラ・ウインフリー氏らの出席が取りざたされている。

 

 オバマ元大統領の右腕だったバイデン大統領は出席せず、地元・デラウエア州で過ごす予定だ。

 

 

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Taro Yanaka

 街ネタから国際情勢まで幅広く取材。

 専門は経済、外交、北米、中南米、南太平洋、組織犯罪、テロリズム。

 趣味は世界を車で走ること。

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