ロシアの百科全書家と呼ばれた、ミハイル・B・ロモノソフは自然科学、化学、物理、歴史学、哲学、鉱物学などを修めたほか、詩人としても名を残した。エネルギー分野で石油が植物起源の有機物の地下深部における乾留であることを証明した、「石油の有機成因論」の始祖でもあった。(写真はYahoo画像から引用)

 

 ロモノソフはロシア帝国時代の1711年11月、アルハンゲリスク市デニソフカで誕生した。幼少時は満足な教育を受けられなかったようだが、19歳にモスクワの学校に入学すると、偉才ぶりがいかんなく発揮された。12年課程をトップの成績を保ちながら、5年で卒業するほどだったという。

 

 その後、ロモノソフは奨学金を得てサンクトペテルブルクに行き、物理学を学んだ。さらにドイツに留学するなど、物理や化学などサイエンス分野はもちろんのこと、言語学や歴史学、哲学に至るまで専門領域を広げた。

 

 ロモノソフはサンクトペテルブルク大学で化学を教えたほか、ロシアの教育改革に尽力した。1755年には、ロシア貴族の支援を受けて大学(後のモスクワ大学)を設立。モスクワ大学の建物の玄関前には、ロモノソフの銅像が建立されているという。

 

 ロモノソフは鉱床学の分野で泥炭や石炭、琥珀、石油が植物起源であることを証明してみせた。彼の学問的な偉業は数多く、本稿で紹介仕切れないが、エネルギー分野でも「鉱床学の父」として学問の発展に寄与した。

 

 ロモノソフが生きた18世紀、シベリア地方は未開の地で、ここを訪れる人たちは殆どいなかった。毛皮の商人くらいとされた時代である。ロモノソフは、不毛の土地でもロシアの力はシベリアの地によってもたらされるとの信念を持っていたようだ。

 

 ただ、国力の源泉になるという彼の予測が立証されるのは、遥か先の20世紀半ばになってからだ。西シベリアで初の出油を見たのはトムスク州コルパシェボで、1954年のことだった。

 

 

在原次郎

 Global Commodity Watcher。エネルギーや鉱物、食糧といった資源を切り口に国際政治や世界経済の動向にアプローチするほか、コモディティのマーケットにかかわる歴史、人物などにスポットを当てたリサーチを行なっている。『週刊エコノミスト』などに寄稿。