イタリアのナポリで7月23日に開催された、主要20カ国・地域(G20)の気候・エネルギー相会合(議長はイタリアのロベルト・チンゴラーニ エコロジー移行相)では、石炭火力発電の縮小・廃止、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑制することなどを議論したものの、合意に至らず、10月に開催予定のG20首脳会合に持ち越されたという。(写真はYahoo画像から引用)

 

 海外報道によると、会合で合意に至らなかった背景には、温暖化ガス排出量が多い中国、インド、ロシアの新興国などが難色を示したとされる。

 

 他方、日米英など主要7カ国(G7)は、今年6月に英国で開催したG7サミットで、2050年までに温室効果ガス(GHG)排出の実質ゼロに加え、気温上昇を1.5度以内に抑えることや、石炭火力輸出にかかわる新規支援の年内停止で合意済みだ。今回の会合でG7は認識を共有しようと、新興国などに理解を求めたが、総じて慎重な姿勢を示したとされる。

 

 ところで、G20では今回初めて、気候変動とエネルギーの合同閣僚会合が行われた。環境省が7月24日に公表したニュースリリースによると、日本からは小泉進次郎環境相らが出席した。気候変動とエネルギーはある意味、政策が相反する組み合わせとも言える。意見の集約が困難になる場面が多いはずだ。

 

 ましてや、G20ともなれば、一層複雑な状況に陥らざるを得ないだろう。先進国と新興国との主張が真正面からぶつかり合い、脱炭素という共通認識では一致するものの、総論賛成、各論反対となるはずだ。とはいえ、環境とエネルギーという、相反する政策の当事者たちが一堂に会し、議論したことは有意義だったといえる。

 

 今後、合意に向けたスピード感が求められるが、これには政治のリーダーシップが求められる。G20首脳会合のほか、今年10月末に英国のグラスゴーで開催予定の第26回気候変動枠組み条約締結国会議(COP26)の場で国際社会が歩み寄れるかが重要なカギとなる。

 

 気候変動問題は地球全体にかかわる課題である。リモート参加が可能とはいえ、多くの国々が一堂に会する機会はそう多くはない。時間の浪費だけは避けなければならない。


 

在原次郎

Global Commodity Watcher